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2021年インバウンドの復活は東京オリンピックが決める!2021年1月月次インバウンドレポート
2021年1月月次インバウンドレポート
2021年2月
執筆:インバウンドアナリスト
宮本 大
■1月の出来事要約
2021年1月の訪日観光(インバウンド)のトピックとしては、新型肺炎COVID-19の感染者が全世界で1億人を突破。日本では1日の感染者数が平均4千人を推移。東京都は1日で2400人を記録。政府は1月8日午前0時から2月7日24時まで一都三県に2回目となる緊急事態宣言を発令。現在は11都道府県に拡大。また1月14日午前0時より、ビジネストラック・レジデンストラックを一時停止。
東京オリンピック中止を巡る海外メディア報道を受けて、政府や関係組織等がそれらを否定する国内報道などが目立った。
日本政府観光局が発表した12月訪日外国人客数は単月で58,700人、2020年累計は411万人となった。前年比は▲87.1%。
■1月主なインバウンド関係ニュース
・2020年12月訪日外国人客数は58,700人。中国とベトナムからの入国者で全体を牽引。詳しくはこちらのレポートを参照。
・日本国政府は緊急事態宣言発令に伴い、ビジネストラック・レジデンストラックを1月14日から一時停止措置。また、ビジネストラックによる日本人及び在留資格保持者について、14日間待機の緩和措置を撤廃。詳細は外務省の国際的な人の往来再開に向けた段階的措置について参照。
・ヨーロッパ連合は日本からの欧州域内への渡航を原則禁止へ。詳細はこちら。
・全日空は国際線の2021年度夏ダイヤを昨年と比べて半減すると発表。詳細はこちら。
・NHKの世論調査によれば、東京オリンピック・パラリンピックを開催すべきは16%。中止すべき、さらに延期すべきが80%となった。詳細はこちら。
・ワクチンパスポートで国を跨ぐ人の往来を再開か。詳細はこちら。
・タイTAT総裁がワクチン接種者には14日間の隔離なしを提案。詳細はこちら。
・日本百貨店協会が発表した12月免税店売上高・来店動向速報によると、免税店売上高は前年同月比▲88.6%の約34億円となった。
・観光庁が発表した12月の宿泊旅行統計によると、旅館、ホテル等の宿泊数は前年同月比▲37.9%の2,925万人。うち外国人は▲93.9%の56万人となった。
■2020年12月訪日外国人客数
以下のグラフが2017年-2020年までの訪日外国人客数である。

日本政府観光局が発表した2020年12月の訪日外国人客数は12月単月で58,700人となった。同年前月比は+3.5%と微増。前年同月比は▲97.6%となった。また、2020年の訪日客数累計は411万人となり、前年比▲87.1%となった。
国別で見ていくと、アジアでは中国18,400人と先月から微増。ベトナムは15,700人と先月から+1,000人。韓国は2,800人と先月から変わらず。台湾は1,000人と先月から200人減。タイも700人と、先月から減少。
英国400人、フランス500人、ドイツ300人と、先月からほぼ変わらずの水準。米国1,300人。先月と同様、中国とベトナムからの入国者数で訪日客数をけん引した形となった。その他の国からは大きな変化はなかった。
■免税店総売上高の推移
以下は百貨店協会が発表している免税店総売上高は以下の図の通り。

12月の訪日外国人数は11月とほぼ変わらず。しかし、免税売上高は約34億円と先月の27億円に比べて増加。購入品の不動の1位は変わらず化粧品であり2位はハイエンドブランド。パスポート別購入者のトップは中国本土。以下台湾、香港、韓国と続く。2020年の年間免税店総売上高は約686億円となり、前年比▲80.2%となった。
以下は購買客数と購買単価の図である。

12月の購買客数は約9千人と先月から2千人ほど増加。一人あたりの購買単価は約36万円と2か月連続で減少。これは購買客数の増加に伴う単価の減少と考える。訪日観光客数は先月から大きな変化はなく、購買客数にも大きな変化がなかった。しかし、一人あたりの購買単価は高く推移し、引き続き免税店での化粧品やハイエンドブランドの購買意欲の高さが伺える。
■外国人延べ宿泊者数
以下の図は観光庁が発表している宿泊旅行統計調査の外国人延べ宿泊数の月次推移である。

以下の図は2020年緊急事態宣言後からの都道府県別外国人延べ宿泊数のランキングである。

グラフの集計を2020年6月からとしており、コロナ前のデータを除くことによって、緊急事態宣言解除後から各都道府県における外国人宿泊者数を把握できる。これは観光目的の入国制限をしている中、在日外国人がどこの都道府県に宿泊しているのかがわかる貴重なデータである。
2020年11月現在、引き続きトップは東京都。次に千葉県、大阪府、沖縄県と続く。先月下位だった徳島県が佐賀県を抜き、秋田県が高知を抜いて下位3県のランキングに入れ替わりがあった。
■今後のインバウンド市場の予想
引き続き前回のレポートからの一般訪日観光客の受け入れのシナリオは以下の通り。
メインシナリオ:2021年7月以降
楽観シナリオ:2021年4月以降
悲観シナリオ:2021年10月以降
【ポジティブ材料】
・日本政府及びIOCが東京オリンピック開催へ前向き。ただし、無観客の場合はインバウンドへはネガティブ材料。
・ワクチンの普及及びワクチンパスポート構想。
・ワクチンが変異株のも作用。
・日本政府の2030年訪日観光客数6000万人の目標。
【ネガティブ材料】
・緊急事態宣言の延長。
・GoToトラベルが一時中断。これが春先まで延長される可能性がある。
・英国、ブラジルと南アフリカの変種が世界中に蔓延し、国を跨ぐ移動に各国が制限強化。
・日本国内の感染者増加で他国が日本への渡航禁止を延長する可能性が高くなる。また日本人の入国拒否が延長される可能性もありうる。
・菅内閣の支持率低下で退陣リスク。GoToトラベルやインバウンドに前向きな菅総理の退陣はリスク要因。
メインシナリオを2021年7月以降と先月から据え置き。日本政府はオリンピック開催に全力を注いでおり、それに伴いワクチンが普及したら一般観光客の受け入れが再開されると考える。足元のコロナ感染者数の増加しているものの、先進国でのワクチン普及や気候が暖かくなれば、自然と感染者は減少していくだろう。そうなれば国を跨いだ移動制限が緩和されると期待できる。
リスクシナリオとしては、東京オリンピックの無観客開催及び中止である。オリンピックの無観客開催且つ一般観光客の受け入れは考えにくい。また、日本のワクチン接種時期は未定であり、到底全国民がオリンピック開催まで1回目のワクチン接種は間に合わない。そうだとすれば、たとえワクチンパスポートで入国してきた海外一般観光客を受け入れられるかどうか。
2021年のインバウンド動向は完全に東京オリンピック次第である。そのキーはワクチン普及とオリンピック観客ありの開催かどうかの動向を追うことで近々明らかになろう。
筆者紹介
・立命館大学卒
・SMBCフレンド証券(現SMBC日興証券)を経てかんぽ生命保険入社
・外国債券・為替ポートフォリオマネイジメント、日本株アナリスト兼株式ポートフォリオマネイジメントを担当
・米国College of William & Mary School of Business卒(MBA)
・Japan Localized設立後、訪日観光客向けへ体験ツアーの企画運営、インバウンド市場のリサーチ業務に従事
会社紹介
Japan Localizedは現在、東京、京都、大阪で訪日観光客向けのガイドツアーの運営を行っています。これまで、+50,000人以上訪日観光客へツアーを遂行しました。トリップアドバイザー社の”旅好きが選ぶ!外国人に人気の日本の体験・ツアー2020”で日本全国第3位に選出されています。
また、北米、欧州、豪州、南米からのインバウンドに特化したツアーの企画、リサーチ、マーケティング、英語及びスペイン語のツアーガイドの養成・研修、欧米豪南米インバウンド向けビジネスコンサルティング、メルマガ発行など幅広くインバウンドビジネスサービスを提供しております。詳しい情報やお問い合わせは弊社のホームページのお問い合わせフォームからお願い致します。