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インバウンドは戻るのか?2020年10月月次インバウンドレポート

2020年10月月次インバウンドレポート


2020年11月

執筆:インバウンドアナリスト

宮本 大



■10月の出来事要約


 2020年10月の訪日観光(インバウンド)のトピックとしては、中国武漢で発生した新型肺炎COVID-19の感染者が全世界で4500万人を突破。欧米で新規感染者が急増し、欧州で再びロックダウンを課し始めた。日本政府観光局が発表した9月訪日外国人客数は単月で13,700人となり、1万人台を回復。



■10月主なインバウンド関係ニュース


・2020年9月訪日外国人客数は13,700人。これに関してはこちらのレポートを参照。


・政府は中国(マカオ、香港含む)、韓国、タイ、ベトナム、シンガポール、ブルネイ、オーストラリア、ニュージーランド、台湾の9か国への渡航中止勧告を解除。


・日本国政府は現在タイ、ベトナム、マレーシア、カンボジア、ラオス、ミャンマー、台湾、シンガポール、新)ブルネイ、新)韓国とレジデンストラックを運用開始。またシンガポールと新)韓国とビジネストラックを運用開始。詳細は外務省の国際的な人の往来再開に向けた段階的措置についてを参照。


・アメリカハワイ州が11月6日より指定病院でコロナウイルス陰性証明の提出により14日間の隔離を免除。詳細はこちら


・11月10日より、東京オリンピック、パラリンピックの販売済み観戦チケットの払い戻しを開始。


・シンガポールは11月6日より、中国本土とオーストラリアのビクトリア州からの観光客を隔離期間免除で受け入れ開始。詳細はこちら


・京都簡易宿所連盟による第4回新型コロナウィスルによる簡易宿所への影響調査によると、インバウンド回復に伴う売上回復期を「来年春ごろ」から「来年秋ごろ」へ後ろ倒し。またGoToトラベルキャンペーンの恩恵を受け難い状況にあると報告。詳細はこちら

・日本百貨店協会が発表した9月免税店売上高・来店動向速報によると、免税店売上高は前年同月比▲91.6%となった。


・観光庁が発表した9月の宿泊旅行統計によると、旅館、ホテルの宿泊数は前年同月比▲47.6%の2555万人。うち外国人は▲97.4%の21万人となった。



■2020年9月訪日外国人客数


 以下のグラフが2017年-2020年までの訪日外国人客数である。



日本政府観光局が発表した2020年9月の訪日外国人客数は9月単月で13,700人となった。同年前月比は+57%。前年同月比は▲99.4%となった。


 国別で見ていくと、アジアでは中国:3000人と先月から倍増。ベトナムは2700人、韓国:1400人、台湾:800人は倍増。また、タイからの入国は1000人と先月400人、先々月の17人から大幅に増加。


 英国:100人、フランス100人と、両国とも先月の200人から半減。ドイツ:90、米国:600人、カナダ70人と先月から微減。アジアからの訪日客数は倍増も、欧米からの来客数は減少した。


 先月と比べとアジア圏からの入国者は倍増。逆に欧米からの入国者は減少した。これはアジア各国とビジネス往来の再開や在留資格者の全面再入国が再開されたからだろう。逆に欧米入国者が減少した。この理由ははっきりとはわからないが、秋学期からの留学生の受け入れが少ないからだろうと推測する。10月からは入国制限が緩和され、新規在留資格者が入国可能になり、またアジア各国とのビジネス往来が再開するので、入国者は増加の一途を辿るだろう。



■免税店総売上高の推移 

以下は百貨店協会が発表している免税店総売上高は以下の図の通り。


 2020年9月は訪日外国人数が増加しているのに、免税総売上高は21.2億円と先月の35.5億から大幅に減少。購入品の不動の1位は変わらず化粧品であり2位はハイエンドブランド。またパスポート別購入者のトップは中国本土。以下台湾、マレーシア、タイと続く。


 以下は購買客数と購買単価の図である。



 9月の購買客数は約5千人と先月の約1万人から半減も、一人あたりの購買単価はは約31万から約38万円へ増加。訪日観光客数は増加にも拘わらず、購買客数は大幅に減少したが、一人あたりの購買単価は大きく上昇。引き続き免税店での化粧品やハイエンドブランドの購買意欲の高さが伺える。


■外国人延べ宿泊者数


以下の図は観光庁が発表している宿泊旅行統計調査の外国人延べ宿泊数の月次推移である。


 9月発表の速報値では外国人延べ宿泊者数は約21.3万人と先月の約21.8万人から減少。免税店総売上高と同様、訪日外国人客数は増加にも拘わらず、9月の外国人宿泊者数は減少した。



 以下の図は2020年緊急事態宣言後からの都道府県別外国人延べ宿泊数のランキングである。

 

 グラフの集計を2020年6月からとしており、コロナ前のデータを除くことによって、緊急事態宣言解除後から各都道府県における外国人宿泊者数を把握できる。トップは東京都。次に千葉県、大阪府、神奈川県と続く。観光目的の入国制限をしている中、在日外国人がどこの都道府県に宿泊しているのかがわかる貴重なデータである。在日外国人は日本の事を日本人以上に知っている人が多く、日本人が見落としている観光資源を発見するための有効なデータだと考える。これを元に各都道府県別のインバウンド集客のための戦略立案を立案してもいいだろう。



■検証


 京都簡易宿所連盟が公表している第4回新型コロナウイルスによる簡易宿所への影響調査をよりよく理解するために、簡単な分析をしてみたい。まず、以下の図は2019年全国宿泊施設タイプ別外国人実宿泊者数のシェアを見てみる。



 2019年全国の宿泊施設タイプ別外国人実泊数のシェアのトップがビジネスホテル、シティホテルと続く。簡易宿所は全体のシェアの2%しかない。


 しかし、京都府の2019年宿泊施設タイプ別外国人実泊数のシェアを見る(以下の図参照)と簡易宿所のシェアは11%と全国シェアを大きく上回っている。また、簡易宿所のシェアが2番目に多いの山梨県の5.6%を大きく上回るほど、外国人の京都府での簡易宿所の利用率は高い。




そして以下の図は2019年の簡易宿所における外国人のシェアである。

 

 上記の図から伺えるように、京都府における簡易宿所の外国人のシェアは40.4%と圧倒的に高く、全国のシェア14.1%をも大きく上回る水準であることがわかる。つまり、足元のインバウンド需要消滅による影響を最も大きく受けているのは京都府の簡易宿所だという事が伺える一つのデータである。




■今後のインバウンド市場の予想


 前回のレポートから引き続き海外からの一般訪日観光客の受け入れのシナリオは以下の通り。シナリオの変更はなし。

メインシナリオ:2021年3月以降

楽観シナリオ:2020年12月以降

悲観シナリオ2021年7月以降

【ポジティブ材料】


・菅内閣の政策方針。感染症対策と経済対策を同時に行っていく政府の方針。レジデンストラックやビジネストラック運用開始で人の往来が徐々に増えていく。また2030年訪日観光客数6000万人の目標に変更はない。

・タイ国およびシンガポールが一部の国から観光客の受け入れが再開。一般観光客の入国拒否している国が大半だが、タイとシンガポールの取り組みがどうなるのかは引き続き注視したい。

・ハワイが日本からの観光客の受入を再開予定。陰性証明を指定の病院で発行してもらえれば、自主隔離は免除される。徐々に国を跨いだ観光のハードルを下げてくれることに期待。

【ネガティブ材料】


・欧米での感染者数の大幅増加。それに伴い欧州では一部を除いて再びロックダウンを再開。欧州域外からの観光客の受入も停止。またフランスなど各国ロックダウン期間を延期する可能性がある。


・日本国内の感染者増加で他国が日本への渡航禁止を延長する可能性が高くなる。また日本人の入国拒否が延長される可能性もありうる。


・米国大統領選挙でバイデン氏が当選した場合、コロナウイスル対策で厳しい対策を講じるリスクがあり、人の移動が制限される可能性がある。


・インフルエンザの流行時期におけるコロナの感染状況。



 先月から引き続き一般訪日観光客の受入時期のメインシナリオは2021年3月と据え置いた。理由としては、アジア各国でレジデンストラック、ビジネストラックが始まっており、一部の国では陰性証明を提出すれば一般観光客をも受入れる国が出てきており、観光客の入国制限を徐々に解除していくかと思われるからだ。


 ただし、アジアやオセアニアの国のように、日本はコロナ感染者数を抑え込めてなく、相手国から日本との人の行き来の緩和をしない可能性がある。いくら日本側が受入可能としても、相手国が感染者数が増えている日本に自国民を送る事は考えにくい。


 先月から変わらないが、感染が拡大している欧州や米国とのビジネスでの人の往来の再開の目途が見えてこない。そして豪州やNZは厳しい入出国制限を自国民に課しており、欧米豪の観光客をターゲットにしている業者にはまだまだ厳しい状況は続く。日本のインバウンド重要顧客は欧州・北米・豪州地域であり、今後の成長のためにもこれらの地域からたくさんの観光客を受け入れなければならない。そのためにも政府はアジア以外の国とのビジネストラックを早期に開始できるように尽力しなければならないと考える。




筆者紹介


・立命館大学卒

・SMBCフレンド証券(現SMBC日興証券)を経てかんぽ生命保険入社

・外国債券・為替ポートフォリオマネイジメント、日本株アナリスト兼株式ポートフォリオマネイジメントを担当

・米国College of William & Mary School of Business卒(MBA)

・Japan Localized設立後、訪日観光客向けへ体験ツアーの企画運営、インバウンド市場のリサーチ業務に従事

会社紹介


 Japan Localizedは現在、東京、京都、大阪で訪日観光客向けのガイドツアーの運営を行っています。これまで、+50,000人以上訪日観光客へツアーを遂行しました。トリップアドバイザー社の”旅好きが選ぶ!外国人に人気の日本の体験・ツアー2020”で日本全国第3位に選出されています。


 また、北米、欧州、豪州、南米からのインバウンドに特化したツアーの企画、リサーチ、マーケティング、英語及びスペイン語のツアーガイドの養成・研修、欧米豪南米インバウンド向けビジネスコンサルティング、メルマガ発行など幅広くインバウンドビジネスサービスを提供しております。詳しい情報やお問い合わせは弊社のホームページのお問い合わせフォームからお願い致します。


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