10月第4週のインバウンド関連株及び国内旅行関連株の動きと見通し
2020年10月25日
執筆:インバウンドアナリスト
宮本 大
主要指数(週)
TOPIX(先週差)
始値1626.79 高値1645.34 安値1614.97 終値1,625.32 (+7.63)
予想PER26.59 予想PRB1.17 予想EPS 61.12 (+0.2)
※モーニングスターより
日経平均株価指数(先週差)
始値23,543.69 高値23,707.16 安値23,436.17 終値23,516.59 (+105.96)
NT倍率14.46
10月4週目の株のまとめ
米国の追加景気刺激策の動向のニュースに振らされる一週間であった。大きな注目であった第2回大統領候補討論会のイベント待ちがあったものの、イベント後の株価の動きはあまりなかった。日本株は売買代金が2兆円を割れる日が10日連続続き、決算発表前及び、大統領選挙待ちで閑散様子見ムード。逆に目立ったのはマザースの利益確定売りが入り、意識されていた25日移動平均線のサポートを割る水準まで下落した。また米国10年債金利は上昇し、イールドカーブはスティープニング。ドル円も104円台半ばまで下落した。
今週の視点
11月3日の米国大統領選を控え、両陣営の主要政策を比較してみると国内では製造業支援・雇用重視で共通している。一方、税制面ではトランプ大統領が法人税減税を、バイデン氏は富裕層の増税を主張しており違いが顕著である。株式市場の観点からみれば、法人税減税は好感されるのに対し増税は嫌気される。ただし、どちらの候補は大統領になっても景気刺激策による経済の立て直しが予想され、株式市場に与える影響に大きな差はないものと考える。
■米国大統領選両陣営の政策比較
10月5週目の株の材料と動き
26日
景気先行指数(日)
臨時国会―菅首相所信表明演説(日)
新築住宅販売件数(米)
27日
耐久財受注(米)
消費者信頼感指数(米)
28日
29日
日金政策決定会合(日)
ECB理事会(欧)
米GDP速報値(米)
PCEデフレーター(米)
新規失業保険申請件数(米)
30日
完全失業率(日)
鉱工業生産指数(日)
ユーロ圏失業率(欧)
ユーロ圏GDP速報値(欧)
ミシガン大学消費者信頼感指数(米)
10月5週目の材料は①米国追加景気刺激策の動向、②米国大統領選挙の行方、③コロナ感染者数、④重要経済指標、⑤米国企業決算発表、⑥日本企業決算発表だろう。まず、いまだにくすぶっている米国の追加景気刺激策の動向だろう。民主党案と共和党での妥協点を探っておるものの、トランプ大統領が難色を示している。こちらの動向で米国株は振らされるだろう。ただ、日本株と米国株の相関は下がって来ており、日本株への影響は限定的と考える。
大統領選挙が迫って来ており、足元はバイデン氏が優勢なものの、郵便投票の締め切り問題を巡って、大統領選挙の結果発表が長引く可能性がリスクがある。その様な中、コロナ感染者数も増加の一途を辿っており、ワクチン開発ニュースなどにも注視する必要がある。また、日銀の政策決定会合やECB理事会、週後半で米国及び欧州の7-9月期GDP速報値が発表される予定でこちらも注目であろう。
一方の日本株は閑散相場が続いているものの、企業の決算発表が本格化。個別企業の決算発表を消化しながら、米国の大統領選挙の動向を見つつ、月末のポジション調整を意識した動きとなろう。また、マザーズの動きにも注視しなければならない。
インバウンド及び国内旅行関連銘柄の動き
以下の図はインバウンド及び国内旅行関連銘柄の昨年末からの対TOPIXでの株価動向である。
今週モニタリング銘柄の主だった材料としては、ANAが今期5000億円規模の赤字になる見通しになるという報道があった。また、国際航空運送協会(IATA)は9月末、20年の世界の航空需要が前年に比べ66%減少する見通しと発表し、国際線の需要が19年の水準に回復するのは24年と予想。ドイツのルフトハンザやKLMオランダ航空など、政府から支援を受けるなどの、厳しい経営環境が続く見通し。
グラフを見るとインバウンド銘柄でも大きく二つに分かれてきているのが読み取れる。資生堂やコーセは中国経済回復の期待から大きく上昇してきており、半面、ANAやJAL、寿スピリッツなどの株価回復は一服感が出て来ており、今後の回復期待の見通しも厳しい。
以下の図は国内旅行関連銘柄の昨年末からの対TOPIXでの株価動向である。
国内旅行関連株は厳しい状況が続く。GoToトラベルの恩恵がどれぐらいなのかがまだ見通せないので、株価も一旦利益確定の売りが続く。JR各社が来年春から終電の切り上げ報道などを受け、JR東海などの鉄道関連株が売られた。H.I.Sは第三者割当増資による80億円の資金調達を完了。また、新株予約権の権利行使期間は10月20日から翌年1月18日まで。権利行使価格は1665.9円で調達見込みは146億円になる見通し。
筆者の個人的見解
日本株は引き続き閑散相場が続く。外国人投資家も今年度末を迎えるにあたって、今更日本株へのアロケーションを引き上げる事はなく、このまま日本市場はスルーになるだろう。活況なマザーズも一旦利益確定売りに押されるものの、和製ロビンフッダーの果敢な押し目買いで一旦はリバーサルするだろうが、そこが売り逃げるチャンスではないかと個人的には思っている。
また日本株は決算発表が本格化。2・8月期決算の動向を見ていると、好決算銘柄が材料出尽くしで売られる傾向が見られた。今後の個別企業の決算発表では割高のバリュエーションが修正される動きが続くと予測する。
アメリカ大統領選挙ではメディアではバイデン氏優勢が報道されるものの、今回で大幅に増えた郵便投票の集計が大統領選挙を混迷に導くのではないかという懸念があり、選挙後でもしばらく結果がわからない状況に陥る可能性が高い。また、追加景気刺激策の動向も不透明感が増してきており、こちらの動向も注視が必要だと考える。
また、懸念事項は米国10年債金利が上昇してきている事が挙げられる。加えてアメリカのインフレ率にも注視しておかなければならない。ただし、ここで気をつけておかなければいけない事は、米国の短期金利は上昇しておらず、ドル円は引き続き円高圧力がかかっていることだ。加えて欧州や米国、中国は自国通貨を切り下げたいという思惑があり、相対的に円が独歩高になる可能性がある事を考えておかなければならない。円高になれば、日本株には逆風が吹く。
先週から引き続き、筆者の考え方は変わらないが、TOPIXのPERは引き続き過去平均と比べて高水準にあり、各社のトップラインが伸びない中でのコストカットによる増益効果で一時的にEPSが回復、もしくは伸びてるが、重要なのは今後どうトップラインを伸ばしていくかだ。今後決算発表を消化しながら、赤字でも赤字幅を減らすためのコスト削減努力をする企業が評価されるだろう。
筆者紹介
・立命館大学卒
・SMBCフレンド証券(現SMBC日興証券)を経てかんぽ生命保険入社
・外国債券・為替ポートフォリオマネイジメント、日本株アナリスト兼株式ポートフォリオマネイジメントを担当
・米国College of William & Mary School of Business 卒(MBA)
・Japan Localized設立後、訪日観光客向けへ体験ツアーの企画運営、インバウンド市場のリサーチ業務に従事
会社紹介
Japan Localizedは現在、東京、京都、大阪で訪日観光客向けのガイドツアーの運営を行っています。これまで、+50,000人以上訪日観光客へツアーを遂行しました。トリップアドバイザー社の”旅好きが選ぶ!外国人に人気の日本の体験・ツアー2020”で日本全国第3位に選出されています。
また、北米、欧州、豪州、南米からのインバウンドに特化したツアーの企画、リサーチ、マーケティング、英語及びスペイン語のツアーガイドの養成・研修、欧米豪南米インバウンド向けビジネスコンサルティング、メルマガ発行など幅広くインバウンドビジネスサービスを提供しております。詳しい情報やお問い合わせは弊社のホームページのお問い合わせフォームからお願い致します。
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