11月第2週のインバウンド株及び国内旅行株の動きと見通し
今週のインバウンド及び国内旅行関連銘柄の情報
インバウンド銘柄の主な材料は:
・JALは国内線の年末年始の運航計画を発表。12月24日~1月4日の国内線便数は21年度計画比97%の水準で運航する。9割以上の運航率となるのは21年3月以来21か月ぶり。緊急事態宣言の解除で観光や出張需要が回復傾向にある。
国内旅行関連銘柄の主な材料は:
・藤田観光は21年12月期3Q決算を発表。売上は前年同期比9%増の192億円、営業損益は▲131億円(前期は▲167円)、純利益183億円(前期は▲171億円)となった。オリンピック関連の宿泊需要で主力のワシントンホテルの稼働率が東京を中心に向上した。また、ホテル椿山荘東京などラグジュアリー部門では婚礼実施件数が増加し増収となった。太閤園や投資有価証券の売却により特別利益を計上したことから、純利益では黒字転換。自己資本比率は28.8%となり、20年末の1.2%から改善した。
・KNT-CTホールディングスは22年3月期2Q決算を発表。売上は前年同期比3.6倍の575億円、純損益は▲68億円(前期は▲168億円)と前期比で赤字が縮小した。本業の旅行需要の回復は見られないが、自治体のワクチン接種の受付業務、東京五輪の大会関係者のバス輸送といった受託事業が売上回復に貢献。通期予想について、売上は旅行需要の回復遅れにより1,800億円→1,500億円に下方修正。一方で純利益は、コスト削減の深化と助成金収入増により、▲148億円→▲130億円に上方修正した。
・星野リゾート投資法人は22 年4月期の運用状況及び分配金の予想の修正を発表。営業収益は51億円→54億円、純利益は15億円→17億円に上方修正した。「界 霧島・別府」の2物件の資産組み入れが修正の背景。分配金は7,110円→7,153円に増配する予定である。
・エアトリは21年9月期末決算を発表。売上は前年同期比16%減の176億円、純利益23億円(前期は▲88億円)と減収ではあるが、黒字転換した。旅行事業以外のITオフショア開発事業や投資事業が安定的に利益貢献し、事業分散が効いた形となった。広告費・人件費等のコスト削減効果もあり、営業利益は過去最高の水準となった。期末配当は前年と同じく1株10円。来期の通期業績予想は売上が前年度26%減の130億円、純利益が同70%減の7億円を見込む。国内旅行回復による収益寄与や投資事業のアップサイド要因は織り込んでいない保守的な予想となっている。
11月2週目の株式相場のまとめ
岸田内閣の経済対策の詳細が小出しに報道されながらも、米国CPIや中国エバーグランデの利払いなどが意識された一週間であった。日経平均株価とTOPIXは先週末比べてほぼ変わらずの水準となったが、日経平均株価30,000円手前で上値が重かった。また、企業決算発表のピークでもあり、上方修正がなかった銘柄の下落が目立った。
TOPIX(先週差)
始値2048.99 高値2049.18 安値2004.89 終値2040.60 (▲0.82)
予想PER15.21 予想PRB1.17 予想EPS 134.16
※モーニングスターより
日経平均株価指数(先週差)
始値29,735.45 高値29,750.46 安値29,040.08 終値29,609.97 (▲1.6)
NT倍率14.51
インバウンド・旅行関連銘柄の株価週間パフォーマンス
以下の図はインバウンド及び国内旅行関連銘柄の昨年末からの対TOPIXでの株価動向である。
モニタリングをしているインバウンド関連銘柄は先週に決算発表をした寿スピリッツの下落が目立った。また、今期下方修正を発表した資生堂は市場コンセンサスをも下回り、それが嫌気され大幅下落。一方、今後の業績回復期待でオリエンタルランドや富士急行の上昇が目立った。
モニタリングをしている国内旅行関連銘柄は総じて堅調な一週間であった。目立ったところでは、赤字縮小決算を発表したKNT-CTや藤田観光は売り込まれる場面があったものの、最悪期を脱した事が好感された模様。
11月3週目の材料
15日
GDP速報値(日)
鉱工業生産(日)
ニューヨーク連銀製造業景気指数(米)
16日
小売売上高(米)
鉱工業生産(米)
17日
機械受注(米)
住宅着工件数(米)
18日
新規失業保険申請件数(米)
19日
消費者物価指数(日)
株式相場の見通し
岸田内閣の経済政策の中身が徐々に明らかになりはじめたものの、市場の反応はいまいちであった。また個別企業の決算はいたって好調で、TOPIXのPERは15倍前半まで低下も、日本の株価指数は上昇してこない状況が続く。この原因としては日本の成長性の期待がなく、外国人投資家が日本株を買う理屈が立たないからだろう。米国はインフレが続く中、日本のインフレ率は低位に推移しており、悪い円安の影響も懸念材料としてあがっていると考える。
アメリカのインフレ率にも注視する必要がある。これは明らかに緩和マネーが作り出した商品価格への投資マネー流入によるインフレであって、良好な景気下でのインフレではないと筆者は考える。このままインフレ率が上がり続ける場合、FRBは早期利上げに踏み出さざる負えない状況になり、コロナ渦で痛んで経済には大きな打撃になる可能性がある。金融緩和と財政出動で支えられている経済だと言う事を忘れてはならない。
インバウンド・旅行関連銘柄はGoToトラベル事業が来年2月から再開されるという報道をどう織り込んでいくのかに注目したい。
筆者紹介
・立命館大学卒
・SMBCフレンド証券(現SMBC日興証券)を経てかんぽ生命保険入社
・外国債券・為替ポートフォリオマネイジメント、日本株アナリスト兼株式ポートフォリオマネイジメントを担当
・米国College of William & Mary School of Business 卒(MBA)
・Japan Localized設立後、訪日観光客向けへ体験ツアーの企画運営、インバウンド市場のリサーチ業務に従事
会社紹介
Japan Localizedは東京、京都、大阪で訪日観光客向けのガイドツアーの運営を行っています。これまで、+50,000人以上訪日観光客へツアーを遂行しました。トリップアドバイザー社の”旅好きが選ぶ!外国人に人気の日本の体験・ツアー2020”で日本全国第3位に選出されています。現在はライブストリームで日本各地からオンラインツアーを行っております。
また、北米、欧州、豪州、南米からのインバウンドに特化したツアーの企画、リサーチ、マーケティング、英語及びスペイン語のツアーガイドの養成・研修、欧米豪南米インバウンド向けビジネスコンサルティング、メルマガ発行など幅広くインバウンドビジネスサービスを提供しております。詳しい情報やお問い合わせは弊社のホームページのお問い合わせフォームからお願い致します。
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