top of page

News

  • Writer's pictureJapan Localized

旅行業界の厳しい決算内容ー11月第2週のインバウンド関連株及び国内旅行関連株の動きと見通し

11月第2週のインバウンド関連株及び国内旅行関連株の動きと見通し



2020年11月15日

執筆:インバウンドアナリスト

宮本 大


主要指数(週)

TOPIX(先週差)

始値1671.99 高値1735.92 安値1670.26 終値1703.22 (+44.73)

予想PER27.35 予想PRB1.13 予想EPS 62.27

※モーニングスターより


日経平均株価指数(先週差)

始値24,568.84 高値25,587.96 安値24,541.28 終値25,385.87 (+1033.64)

NT倍率14.90



11月2週目の株のまとめ


 バイデン氏が勝利宣言を行い、週初から株は続伸でスタート。また、米ファイザーのワクチンがコロナに対する有効性が見られたという発表を受け、経済活動の正常化期待で景気敏感株が大幅に買われる展開となった。日経平均株価も外国人投資家の先物と現物の買いも入り、1991年以来の25000円台を回復し8連騰を記録した。ただ、急速に上昇した反動や、新規コロナ感染者数の増加が懸念され、金曜日は反落して取引を終えた。



11月3週目の株の材料と動き


16日

GDP速報値(日)

鉱工業生産(日)

NY連銀製造業指数(米)


17日

小売売上高(米)

鉱工業生産(米)


18日

住宅着工件数(米)


19日

中古住宅販売件数(米)

景気先行指数(米)

新規失業保険申請件数(米)

フィラデルフィア連銀景気指数(米)


20日

CPI(日)




 11月3週目の材料は①新規コロナ感染者数、②ドル円相場、③日本国政府のコロナ対策の動向だろう。欧米ではコロナ感染者数が激増している。これから本格的な冬を迎えるにあたり、欧州は厳しい処置を取らざるおえない状況になっている。またトランプ政権はコロナ対策には消極的であるが、求心力を失った中、各州独自で厳しいロックダウンをすることも考えられるので、注視が必要である。


 日本もコロナ感染者数が増えてきており、政府と都道府県の間で対応が分かれ始めている。また再び自粛ムードが強まれば、マーケットに対する下押し圧力が強まろう。


 ドル円相場にも注視しておかなければならない。欧州や米国はまだイールドカーブコントロールやETF買いなどの金融政策手段が残っており、大型財政出動の可能性もある中、相対的に円が独歩高の状況にあるので、ドル円相場にも目を向けておく必要があろう。



インバウンド及び国内旅行関連銘柄の動き

 以下の図はインバウンド及び国内旅行関連銘柄の昨年末からの対TOPIXでの株価動向である。




 インバウンド銘柄の株価は概ね前週比で上昇。9日に米製薬大手のファイザーの新型コロナウィルスワクチンで予防に高い有効性を示すデータが発表されたことを受けて、10日の東京市場ではインバウンド銘柄の株価は大幅に上昇した。翌11日以降は国内の新型コロナウィルス感染者数増加が懸念され、下落に転じる銘柄が目立つ展開となった。


 個別材料では、資生堂が10日に20年12月期3Qの決算を発表。売上は前年同期比23%減の6,536億円、営業利益は同91%減の89億円、純損益は▲136億円の最終赤字となった。通期業績見通しを下方修正し、営業損益▲100億円、純損益▲300億円とした。国内での年間見通しは対前年比▲30%と回復に遅れがみられる一方、中国では同+10%と完全に回復してきている。


 また、12日発表のマツモトキヨシの決算では21年3月期2Qは減収減益となったものの、通期見通しを上方修正し、営業利益350億円(+45億円)、純利益238億円(+28億円)とした。インバウンドの減少、外出自粛等により都市型店舗が苦戦しており、郊外型を主力とするドラッグストアと比べて業績が見劣りするが、来年10月にはココカラファインとの経営統合を控え、統合効果に期待したい。


その他、ラーメン店一風堂の力の源ホールディングスが12日に21年3月期2Qの決算を発表。売上は前年同期比52%減の70億円、営業損益は▲9億円、純損益は▲19億円。店舗の休業等による売上の大幅減に加え、臨時休業等による特別損失を13億円計上するなど、厳しい決算となった。中間配当は無配。国内既存店売上高は4月の前年同期比42.7%をボトムに10月は同75.6%まで回復していることは明るい材料である。


 以下の図は国内旅行関連銘柄の昨年末からの対TOPIXでの株価動向である。


 国内旅行関連銘柄の株価は前週比で下落している銘柄が多かった。11日にはコロナワクチンの早期実用化期待により株価は上昇したが、12日以降は国内コロナ感染者数の増加懸念等により売りが続き、11日の上げ幅を打ち消す格好となった。また、10日に藤田観光、11日にKNT-CT、13日にエアトリがそれぞれ決算発表を行ったが、3社とも大幅赤字となっており、改めて厳しい事業環境が認識された。


 決算の内容を個別でみていくと、藤田観光の20年12月期3Qでは、売上が前年同期比64.6%減の176億円、営業損益が▲167億円、純損益が▲171億円。主力のワシントンホテルの業績の落ち込みが響く形となったが、足もと仙台や浦和など都心部以外での回復が確認されている。また、エアトリの20年9月期末決算では売上が前年同期比13%減の211億円、営業損益が▲87億円、純損益が▲83億円とこちらも大幅赤字となった。国内旅行はGotoトラベルの影響により足もと回復しており、10月は単月黒字化したという。21年9月期の通期業績予想は売上235億円、営業利益3億円、純利益1.8億円を見込む。配当は未定とした。


 最後に、KNT-CTホールディングスの21年3月期2Qは、売上が前年同期比92.6%減の158億円、営業損益が▲231億円、純損益が▲168億円の赤字。また、通期業績を開示し、売上1,400億円、営業損益▲250億円、純損益▲170億円で、下期に営業利益黒字化を見込む。同時に2022年3月末までに店舗数を1/3に縮小する事業構造改革を発表。人員削減などで22年までに経費削減効果200億円を見込む。なお、構造改革費用は通期見通しに未反映となっており、業績のさらなる下振れリスクはみておかなければならない。加えて、資本の棄損が大きく財務面でのリスクにも注意が必要である。


 今後の見通しとしては、GOTOトラベルの恩恵をいかに取り込めるかによって、旅行関連銘柄の株価にも濃淡がでてこよう。 その内容次第で底打ち反転か、さらに下落する可能性があることを注視しておかねばならないだろう。



筆者の個人的見解


 2週連続で日経平均は1000円以上上昇。11月に入ってから急速に上げ幅を広げており、強気相場入りしたという見方も出てきている。日本企業決算もこなし、TOPIXのPERは過去の水準に比べて割高な水準にあるものの、金融政策と財政政策に支えたらた実態が伴わない株価であるが、ここからもう一段上昇を予測する人も増えてきている。


 実際に、バイデン氏が大統領になった場合(トランプ氏はまだ敗北宣言をしていない)米国は1000兆円規模の財政出動とFRBはイールドカーブコントロールやゼロ金利政策などの手段が残っており、巨額の財政出動と金融緩和相場がまだまだ続くと考えたら、過去のPER水準で今の株価を語ることはできないだろう。加えて日本も第3次補正予算による財政出動も控えており、相場を支える要因になろう。まさに政策に売り無し。


 リスク要因として考えられることはバイデン氏はコロナ対策を一丁目一番地に掲げているが、まだマーケットはその事を織り込んでいるとは思えない。またバイデン氏の人事にも注目だろう。とくに財務長官を巡っての人事はマーケットの大きな関心であろう。加えて10月末に材料視されていた米国追加景気刺激策も暗礁に乗り上げており、まだ次期大統領すら決まっていない。このようなリスク要因がいつ材料視されてもおかしくない状況なので注視が必要である。


 また、ドル円相場も注視しておかなければならない。米国、欧州、日本も国債の大量発行により金利に上昇圧力がかかるものの、中央銀行の量的緩和で金利上昇を抑え込んでおり、日米欧金利差は拡大しておらず、相対的に円高になる圧力がかかり続けていることは、株価の上値を抑える要因の一つである。



筆者紹介

・立命館大学卒

・SMBCフレンド証券(現SMBC日興証券)を経てかんぽ生命保険入社

・外国債券・為替ポートフォリオマネイジメント、日本株アナリスト兼株式ポートフォリオマネイジメントを担当

・米国College of William & Mary School of Business 卒(MBA)

・Japan Localized設立後、訪日観光客向けへ体験ツアーの企画運営、インバウンド市場のリサーチ業務に従事



会社紹介


 Japan Localizedは現在、東京、京都、大阪で訪日観光客向けのガイドツアーの運営を行っています。これまで、+50,000人以上訪日観光客へツアーを遂行しました。トリップアドバイザー社の”旅好きが選ぶ!外国人に人気の日本の体験・ツアー2020”で日本全国第3位に選出されています。


 また、北米、欧州、豪州、南米からのインバウンドに特化したツアーの企画、リサーチ、マーケティング、英語及びスペイン語のツアーガイドの養成・研修、欧米豪南米インバウンド向けビジネスコンサルティング、メルマガ発行など幅広くインバウンドビジネスサービスを提供しております。詳しい情報やお問い合わせは弊社のホームページのお問い合わせフォームからお願い致します。



37 views
bottom of page