旅行関連銘柄バブルは終わった
2021年6月20日
執筆:インバウンドアナリスト
宮本 大
主要指数(週)
TOPIX(先週差)
始値1966.13 高値1983.13 安値1945.86 終値1946.56 (▲7.46)
予想PER17.76 予想PRB1.32 予想EPS 109.60
※モーニングスターより
日経平均株価指数(先週差)
始値29,153.11 高値29,480.85 安値28,875.39 終値28,964.08 (+15.35)
NT倍率14.87
今週のインバウンド及び国内旅行関連銘柄のニュース
インバウンド銘柄の主なニュースは:
・Jフロントリテイリングは大丸松坂屋百貨店の6月度の既存店売上についてコメント。14日までの累計で対前年2%増(対前々年▲30%減)で推移している。9都道府県に対する緊急事態宣言の延長に伴い、一部店舗で土日に売場を限定・制限しているマイナス影響を受けたものの、高価品の販売が好調なことから僅かながら前年を上回っている。
・マツモトキヨシは5月の月次売上を発表。既存店は前年同月比2.9%増、全店は同5.9%増となった。
・オリエンタルランドはディズニーの時短営業を7月11日まで継続すると発表。千葉県によるまん延防止等重点措置の再延長を踏まえた措置で、営業時間は午前 10 時から午後 7 時までとなる。
国内旅行関連銘柄の主なニュースは:
・KNT‐CTホールディングスは、同社株式が東証の上場廃止にかかる猶予期間に入ったと発表。21年3月末において債務超過となったことによるものであるが、同社発表によると、親会社の近鉄GHD等による資本支援により、6月末には債務超過が解消される見込みである。
・星野リゾート投資法人は、21年4月期(20/11~21/4)決算を発表。営業収益は前期比23.8%減の45億円、純利益は同48.6%減の14億円。1口あたりの分配金は6,406円と、前期(12,860円)から半減した。星野リゾートブランドはマイクロツーリズム需要獲得に向けた取組みを進めたことにより、運用実績は底堅く推移したものの、ハイアットなどの都市型ホテルの物件が依然苦戦している。22年10月期は営業収益5.4%増、純利益2,7%減を見込む。
インバウンド・旅行関連銘柄の株価週間パフォーマンス
6月3週目の株式相場のまとめ
今週はFOMCを控えて米国株は高値圏でもみ合いが続き、景気敏感株などの利益確定売りやハイテクグロース株中心に軟調な展開であった。また日経平均株価も29000円前後での攻防が続いた。個別株だとソフトバンクグループやファストリテイリングの株価は軟調に推移したものの、トヨタ株が10000円台の大台を付けるなど、バリュー優位が目立った。しかし、一台イベントを通過し、テーパリングを意識されてか、週末バリュー中心に大きく売られる展開となった。
またインバウンド・旅行関連株は緊急事態宣言終了に関する報道や、日本のワクチンパスポート導入などの報道で株価が上昇する場面があったものの、過熱感の一服感があり、一週間のパフォーマンスはモニタリングしている全銘柄はマイナスリターンであった。
インバウンド及び国内旅行関連モニタリング銘柄の動き
以下の図はインバウンド及び国内旅行関連銘柄の昨年末からの対TOPIXでの株価動向である。
インバウンド関連銘柄は総じて軟調な一週間であった。モニタリングをしている銘柄は大きく値を下げた。特に空運2社の下げが目立った。今後もこの流れが続くと予想される。
以下の図は国内旅行関連銘柄の昨年末からの対TOPIXでの株価動向である。
国内旅行関連銘柄では上場廃止にかかる猶予期間入りが発表されたKNT-CT(近畿日本ツーリストクラブツーリズム)の下落が目立った。また、オープンドアなどの下げも大きく目立った。一方、エアトリは業績面及び個人投資家からの買い需要が旺盛で株価の下落幅が限定的だった。
6月4日週目の株の材料と動き
21日
22日
中古住宅販売件数(米)
23日
景気先行指数(日)
ユーロ圏製造業PMI(欧)
ユーロ圏非製造業PMI(欧)
新築住宅販売件数(米)
24日
GDP確報値(米)
耐久財受注(米)
新規失業保険申請件数(米)
25日
PCEデフレーター(米)
筆者の個人的見解
注目だったFOMC一大イベントが通過。FOMCメンバーが利上げを予想するドットチャートが2023年に2回利上げが多数となり、テーパリングがさらに意識されることとなった。FOMCを受けてマーケットの値動きは限定的であったが、週末にかけてFEDのメンバーの発言などを受けてリスクオフとなった。今後の動向については、たくさんの仮説があると考えるが、やはりマーケットはインフレ圧力を懸念して、早期のテーパリングを警戒しているのではないかと筆者は考える。パウエル議長やFRBはインフレは一時的だと言うが、今までは市場との対話がうまくいっていた安心感があったものの、足元の景気回復や経済指標データ、商品市況を見る限り、将来を予測して動くマーケット参加者はインフレは一時的とは思っていないと考えているのではないかと思われる。
また、仮想通貨市場が軟調であり、再び他のマーケットにインパクトを与える可能性が大きい。加えて、S&P500種のマージンデットが過去最高値にあり、資金の巻き戻が起きた場合の売りが売りを呼ぶ展開に注意が必要だ。我々はアルケゴス問題を忘れてはならない。
筆者紹介
・立命館大学卒
・SMBCフレンド証券(現SMBC日興証券)を経てかんぽ生命保険入社
・外国債券・為替ポートフォリオマネイジメント、日本株アナリスト兼株式ポートフォリオマネイジメントを担当
・米国College of William & Mary School of Business 卒(MBA)
・Japan Localized設立後、訪日観光客向けへ体験ツアーの企画運営、インバウンド市場のリサーチ業務に従事
会社紹介
Japan Localizedは東京、京都、大阪で訪日観光客向けのガイドツアーの運営を行っています。これまで、+50,000人以上訪日観光客へツアーを遂行しました。トリップアドバイザー社の”旅好きが選ぶ!外国人に人気の日本の体験・ツアー2020”で日本全国第3位に選出されています。現在はライブストリームで日本各地からオンラインツアーを行っております。
また、北米、欧州、豪州、南米からのインバウンドに特化したツアーの企画、リサーチ、マーケティング、英語及びスペイン語のツアーガイドの養成・研修、欧米豪南米インバウンド向けビジネスコンサルティング、メルマガ発行など幅広くインバウンドビジネスサービスを提供しております。詳しい情報やお問い合わせは弊社のホームページのお問い合わせフォームからお願い致します。
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