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日本のインバウンドに立ちはだかる障壁|2022年8月インバウンドレポート

■8月の出来事要約

2022年8月の訪日観光(インバウンド)のトピックとしては、岸田総理大臣が記者会見で9月7日から水際対策の緩和を表明。3回のワクチン接種で入国前72時間前陰性証明が不要となる。また、1日の入国上限数を2万人から5万人(日本人帰国者含む)へ引き上げをし、団体旅行パッケージツアーは常時添乗員が不要となった。

しかし、引き続き全世界から日本入国へのビザ取得や個人旅行は認められない。世界でも類を見ない、非科学的で外国人がウイスルを持ち込むという思い込みに基づく水際対策の緩和が続く。


■8月主なインバウンド関連データ

日本政府観光局が発表した2022年7月の訪日外国人客数は7月単月で144,500人となった。前年同月比は+183%、同年前月比+20%となった。

以下のグラフは2017年からの訪日観光客数のグラフである。

以下の図はLocalizedターゲット国別訪日客数。

日本百貨店協会が発表した2022年7月免税店売上高・来店動向速報によると、免税店売上高は前年同月比+163.6%の102億円だった。コロナ後2020年2月以来初の100億円越えで、添乗員付きの団体旅行が再開された影響を大きく反映していると思われる。

観光庁が発表した2022年7月の宿泊旅行統計によると、2022年7月の外国人延べ宿泊者数は78万人泊、2019年同月比▲92.7%、前年同月比▲0.1%であった。水際対策の緩和で添乗員付きの団体旅行者の泊数増加もあるが、昨年の東京オリンピックで一時的に宿泊者数が増えているので、前年同月比ほぼ変わらずとなった。

以下は8月単月のインバウンド・旅行関連銘柄のパフォーマンス。


トップはアドベンチャー、ワシントンホテル。この2銘柄は好決算+水際対策の緩和の追い風で大幅高。一方、スシローは業績下方修正とマグロ偽装などの影響で大幅安。また、旅工房の決算内容が嫌気され、4-6月期の回復度合いで明暗が分かれる形となった。


■インバウンド復活についての私見

今の日本政府はコロナ感染拡大に全く対応出来ておらず、また内外から厳しすぎる水際対策の批判から逃れるために、小手先の緩和を続けている。筆者は丸29カ月この水際対策の行方を追いかけているが、岸田政権になってから科学的な判断に基づいての水際対策の緩和が一切行われていない。ここであーだ、こーだ言っても仕方がないので、今後日本のインバウンドがどうなっていくか、現実的に考えていきたい。


まず、大半の人は水際対策が全廃若しくは大幅緩和された場合、インバウンド客は大挙して戻ってい来る考えているだろう。そのような事を言っている同業者も非常に多い。しかし、筆者全くそうは思っていない。

理由としては以下の点が挙げられる;

①景気後退

②物価高

③台湾情勢

④タイの苦戦

⑤日本のマスクマナー


①景気後退はいたって単純な話で、景気が後退すれば消費者は生活防衛をするため、余暇レジャー、外食消費から減らしていく。これは各国の状況によるが、2008年のリーマンショック時、訪日客数は前年比マイナスとなった。

現在、日本を含む東アジア国以外はコロナ後の旅行需要(ペントアップデマンド)が一巡してしまったので、日本は欧米などの国からのリベンジ消費(旅行)は期待できず、世界的に景気後退になれば、訪日需要は大きく戻らない可能性がある。


②物価高が深刻である。米国と欧州の物価上昇率は前年比を大きく上回っており、特にロシアウクライナ戦争でエネルギー価格の上昇が著しい。日本はまだコロナ禍で海外旅行をする機会がないから実感はないと思うが、航空運賃がとても高く、ロングホールの旅行を躊躇したくなるぐらい高いのである。羽田―ニューヨーク行の航空運賃は軽く20万円は超える。そのような中、今まで以上日本に旅行をしたくなるような強い動機が必要となる。


③日本の最大のインバウンド太客、中国(香港含む)と台湾情勢が日本のインバウンド客数に大きな影響を与える。日本はG7寄り、欧米の西側諸国なので、万が一有事が発生したら、中国へ経済的制裁の一環で、中国からの査証(ビザ)の停止することは容易に考えられる。また、中国も対抗措置として、同様な事をするだろう。

有事が起きなくても、当面中国は自国の人民を海外旅行に出すような事はしないだろう。それは世界の観光市場は中国人がいないと経済的に厳しいという事をわかっているからだ。以前、THAAD問題が起きた時に、中国政府は韓国への団体旅行を禁止した。その時に、韓国のインバウンド市場は干上がった事は記憶に新しい。日本のインバウンドマーケットは中国人観光客がいないと厳しい。


④タイ政府が2022年は1000万人のインバウンド客数を見込めると発表した。ただ、これは2019年比の25%程度に過ぎない。タイは昨年から個人観光客の受入を始めており、今年の7月よりコロナ規制はほぼ撤廃した。しかし、現実は相当厳しい。タイはアジアNo.1の観光立国である。日本より多くの観光客が訪れ、消費も日本より多い。そのタイの状況を見ていれば、ある程度日本のインバウンドがどうなるかがわかると筆者は思っている。詳しくは訪日ラボさんに寄稿した記事を参照して頂きたい。


⑤最後に日本のマスクマナーの強要は訪日意欲を大きく削ぐ内容だ。日本国内だけにいて、日本のメディアばかり見ている人には理解できないと思うが、世界はコロナ前と大きく変わらない状況となっている。まだ各国にはマスクルールがあるものの、海外から来る人にマスクマナーを強要している国は日本だけだ。残念ながら、日本人はコロナ前の人間的な生活、Withコロナへ向けて社会活動を正常化する努力をしていく気が無く、コロナ禍のままでいいと思っている人が大半なんだろう。到底インバウンド受け入れ環境を醸成するのは難しいだろう。


筆者紹介

・立命館大学卒

・SMBCフレンド証券(現SMBC日興証券)を経てかんぽ生命保険入社

・外国債券・為替ポートフォリオマネイジメント、日本株アナリスト兼株式ポートフォリオマネイジメントを担当

・米国College of William & Mary School of Business 卒(MBA)

・Japan Localized設立後、訪日観光客向けへ体験ツアーの企画運営、インバウンド市場のリサーチ業務に従事

・まいまい京都・東京事務局


会社紹介

Japan Localizedは東京、京都、大阪で訪日観光客向けのガイドツアーの運営を行っています。これまで、+50,000人以上訪日観光客へツアーを遂行しました。トリップアドバイザー社の”旅好きが選ぶ!外国人に人気の日本の体験・ツアー2020”で日本全国第3位に選出されています。現在はライブストリームで日本各地からオンラインツアーを行っております。

また、北米、欧州、豪州、南米からのインバウンドに特化したツアーの企画、リサーチ、マーケティング、英語及びスペイン語のツアーガイドの養成・研修、欧米豪南米インバウンド向けビジネスコンサルティング、メルマガ発行など幅広くインバウンドビジネスサービスを提供しております。詳しい情報やお問い合わせは弊社のホームページのお問い合わせフォームからお願い致します。

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