最新インバウンド情報
■5月のインバウンド関連の出来事要約
2022年5月の訪日観光(インバウンド)のトピックとしては、6月10日より管理型小規模団体ツアー限定で訪日外国人受け入れを再開。また、6月1日より、「青」区分の国・地域からの帰国者・入国者について、ワクチン接種の有無にかかわらず、入国時検査及び入国後の自宅待機を求められないことになる。
株式市場では、観光客受入再開表明及び水際対策の緩和でインバウンド関連銘柄が期待先行で動意づいた。ニュースや新聞でインバウンド復活に関しての報道を目にした方も多かったと思われる。それぐらい株式市場は連日インバウンド関連の話題で持ち切りだった。
■5月主なインバウンド関連データ
日本政府観光局が発表した2022年4月の訪日外国人客数は4月単月で139,500人となった、2年ぶりの10万人台へ回復。前年同月比は+1185.4%と大幅増となった。
以下のグラフは2017年からの訪日観光客数のグラフである。
以下の図はLocalizedターゲット国別訪日客数。
・日本百貨店協会が発表した2022年4月免税店売上高・来店動向速報によると、免税店売上高は前年同月比+47.6%の66億円だった。
これはコロナ禍後、初の60億円越え。水際対策の緩和による免税店の回復が鮮明になってきているのがわかる。
・観光庁が発表した2022年4月の宿泊旅行統計によると、2022年4月の外国人延べ宿泊者数は51万人泊、2019年同月比▲95.5%、前年同月比+126.1%であった。
以下の図は2022年の都道府県別外国人延べ宿泊数のランキングである。
在日外国人が日本のどこへ宿泊しているのかがわかる貴重なデータ。引き続き、高知県、鳥取県、宮崎県が最下位。
以下は5月インバウンド・旅行関連銘柄のパフォーマンス。
5月トップは韓国系旅行代理店のハナツアーが+82%と大幅高。続く爆買い期待で家電量販店ラオックスも+48%と大幅高。一方、コーセーと資生堂の化粧品メーカーは逆行安。スシローを運営するフードアンドライフカンパニーも円安原材料高が重石となった。
■考察
参議院選挙前に外国人観光客を管理型ツアーで認める案が急に浮上し、急ピッチで外国人観光客の受入れを表明した。その背景には岸田総理がイタリアのドラギ首相や、来日したミシェル欧州理事会議長との日EU定期首脳協議で開国を迫られたからである。
我々は、不必要な渡航制限を抑制することを求める。我々は、相互的な査証免除措置の回復に向けて取り組む。
第28回日EU定期首脳協議
また、ロンドンシティではG7並みの入国制限緩和をすると述べながらも、小手先な水際対策緩和で外圧から逃げようとしている日本政府の行動は、まさに幕末の徳川幕府と同じ轍を踏んでいるのである。
一方、外圧便りだが、6月1日からの水際対策の緩和は日本開国への大きな一歩であり、何もしないよりかは評価できよう。ただし、インバウンドの復活への道のりは厳しいと予測する。
何故インバウンドの復活の道のりが厳しいのか?
それは、日本のインバウンドの主要顧客である、中国・台湾・韓国からのインバウンド数がコロナ前のように見込めないからである。
まず、中国はゼロコロナ政策を徹底している。未だに都市封鎖を行いならが、厳しい水際対策を敷いている。そもそも中国国外に出る前に、中国人は自宅から出れないのである。
次に、台湾。こちらもある程度厳しい水際対策を敷いており、台湾は海外団体旅行を禁止している。日本は団体旅行でしか観光入国を認めないので、一番の優良顧客で日本の地方観光を支える台湾からの観光客が見込めないのである。
頼み綱は韓国からのインバウンドだろう。2022年の日本のインバウンドは韓国人に救われるだろうと予測する。とあるデータ(非公開)からの観察だが、ここ数カ月韓国から日本への航空チケットを検索するトラフィックが大幅に増えている。また、韓国系旅行代理店、ハナツアーの株価の上がり方を見ても、マーケットは韓国からのインバウンドを強く期待していると考えられる。
いつ日本のインバウンドは復活するのか?
それはコロナを第5類に格下げするのか、欧米からの外圧が強まるのかのどちらかがトリガーになると考える。足下、岸田総理はG7並みに水際対策をすると表明したものの、入国数上限を2万人に引き上げ、管理型団体ツアーでしか観光客を受け入れないという愚策が出てきた。これを段階的に緩和していくと言うが、日本政府が自ずから緩和をしていくとは到底思えず、コロナを第5類への格下げも、そもそもマスクの着用で大事な日本国民世論と自民党の大スポンサー、日本医師会の意見を振り切ってまでの政治決断を出来る日本の政治家は皆無だろう。なので、もう外圧しかし頼りがないのでは、と筆者は思う。
あと最後に円安はインバウンド(訪日客数と観光消費)に追い風か?
という事に一言申しておきたい。
結論から言うと、円安はインバウンドにプラスに作用しない。また、円高もインバウンドにネガティブに作用しない。つまり、為替レートはインバウンド数とインバウンド消費に関係がないのである。
以下の図は2016年から2019年までのドル円と月間訪日観光客数のグラフである。
青い線の月間訪日観光客数は赤い線のドル円の動きとは連動性がなく、淡々と右肩がありになっているのがわかるだろう。
また以下の図は2010年から2019年までの訪日外国人消費額とドル円の散布図である。
簡単に説明すると、「R²」が高ければ為替レートと観光消費額との相関が高いと言えるが、買物代以外の項目ではこの「R²」は0.6以下なのである。つまり、相関が高いとは言えないので、円高でも円安でも買物代金以外インバウンドへはプラスマイナスに作用しないのである。
ちなみに、買物代がドル円との相関がある程度高いのは、中国人による爆買いが買物代に大きく寄与しているからであり、この時たまたま円安だったから相関が高く出ているだけだと筆者は結論づけている。
メディア、政治家が口をそろえて円安はインバウンドにプラスって言っていることがいかにいい加減なのだと言う事が理解できるだろう。
筆者紹介
・立命館大学卒
・SMBCフレンド証券(現SMBC日興証券)を経てかんぽ生命保険入社
・外国債券・為替ポートフォリオマネイジメント、日本株アナリスト兼株式ポートフォリオマネイジメントを担当
・米国College of William & Mary School of Business 卒(MBA)
・Japan Localized設立後、訪日観光客向けへ体験ツアーの企画運営、インバウンド市場のリサーチ業務に従事
・まいまい京都・東京事務局
会社紹介
Japan Localizedは東京、京都、大阪で訪日観光客向けのガイドツアーの運営を行っています。これまで、+50,000人以上訪日観光客へツアーを遂行しました。トリップアドバイザー社の”旅好きが選ぶ!外国人に人気の日本の体験・ツアー2020”で日本全国第3位に選出されています。現在はライブストリームで日本各地からオンラインツアーを行っております。
また、北米、欧州、豪州、南米からのインバウンドに特化したツアーの企画、リサーチ、マーケティング、英語及びスペイン語のツアーガイドの養成・研修、欧米豪南米インバウンド向けビジネスコンサルティング、メルマガ発行など幅広くインバウンドビジネスサービスを提供しております。詳しい情報やお問い合わせは弊社のホームページのお問い合わせフォームからお願い致します。
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