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日本のインバウンド消費に足りないもの|2022年6月月次インバウンドレポート

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■6月の出来事要約

2022年6月の訪日観光(インバウンド)のトピックとしては、令和4年版の観光白書が閣議決定された。その中で令和4年度に講じようとする施策は、「新たな GoToトラベルトラベル事業」やワーケーション、「第2のふるさとづくり(何度も地域に通う旅、帰る旅)」、観光地等におけるデジタル実装、観光産業や観光地の再生・高付加価値化、地域独自の旅行商品の創出等が挙がった。

タイが7月1日よりタイランドパスを撤廃。


■6月主なインバウンド関連データ

日本政府観光局が発表した2022年5月の訪日外国人客数は5月単月で147,000人となった。前年同月比は+1364.9%と大幅増となった。

以下のグラフは2017年からの訪日観光客数のグラフである。

2022年5月の訪日外国人客数

以下の図はLocalizedターゲット国別訪日客数。


Localizedターゲット国別訪日客数


2022年5月免税店売上高

日本百貨店協会が発表した2022年5月免税店売上高・来店動向速報によると、免税店売上高は前年同月比+147.7%の62億円だった。2か月連続で60億円越えも、先月より約4億円減少。



2022年5月の外国人延べ宿泊者数

観光庁が発表した2022年4月の宿泊旅行統計によると、2022年5月の外国人延べ宿泊者数は70万人泊、2019年同月比▲92.8%、前年同月比+193.3%であった。


以下は6月単月のインバウンド・旅行関連銘柄のパフォーマンス。

6月トップは美容機器メーカーのヤーマン。6月に発表した2022年4月期決算の内容と2023年期の業績予想が市場予想を上回った事に加え、相場全体の“インバウンド復活期待”先行買いの地合いもあって、先月末比+40%の大幅上昇となった。続いて、中国爆買い銘柄の家電量販店のラオックスが上昇率2位の20.55%と、“爆買い”と“インバウンド復活期待”の期待先行買いが強かった。


一方、宿泊予約サイトコントローラー大手の手間いらず、先月上昇率トップだった、韓国系旅行代理店のハナツアーが下落率のトップとなった。こちらは先月からの大幅上昇の反動から、利益確定売りに押された。


■インバウンド復活についての私見

参議院選挙選挙期間に入り、日本政府からは水際対策の緩和の話が一切なくなった。入国上限数1日2万人は変わらず、搭乗72時間前陰性証明は引き続き課せられたままだ。一方、メディアやインバウンド関連業者は日本のインバウンド復活で大騒ぎ。日本の鎖国と北朝鮮型管理旅行の問題の根本については一切触れられていない。筆者は日本がコロナ前のような制限がない出入国はしばらくないのではないかと思い始めてきた。


また、岸田総理が5月初に「G7並みに入国制限を緩和する」と述べて、全く実行に移されていない。日本人として、国益に反する事は述べたくないが、日本人がEUやアメリカへの渡航にビザを課せられないと日本政府は入国制限を緩和しないのではないかと思い始めた。日本はまだ全世界にビザを課している。


■考察

今回は日本のインバウンドを行う上で考えるべき課題を一つ取り上げたい。コロナ前まで訪日客数は政府の目標を上回るペースで伸びてきたが、旅行消費が目標の半分となっている。その旅行の消費を上げるために、日本政府観光局は「高付加価値」を言い続けている。もちろん訪日客の単価を上げるためには高付加価値のコンテンツなどを作り上げる必要があるが、日本に何が足りないのかをアジアトップの観光立国、タイの数値と比べながら少し考えてみたい。


簡単な分析ではあるが、日本とタイの1日あたりの旅行消費額を以下のようにグラフ化した。

日本とタイの1日あたりの旅行消費額

データ:National Statistical Office, Average Expenditure of International Tourist Arrivals to Thailand by Expenditure Item: 2010 – 2019, 観光庁訪日外国人消費動向調査、三菱UFJリサーチ&コンサルティングExchange Quotations - Yearly Averages より筆者作成



このグラフから見えるように、全体の1日あたりの旅行消費額は日本とタイはほぼ同じと言ってもいい。台湾、香港、中国、シンガポール、英国、フランス、イタリア、スペイン、カナダ、オーストラリアからの観光客は日本で使う金額の方が大きい。一方、韓国、マレーシア、インドネシア、フィリピン、ベトナム、インド、米国からの観光客はタイで使う金額の方が日本より多い事がわかる。


次に1日あたりの宿泊費を見てみたい。

タイと日本の宿泊費

データ:National Statistical Office, Average Expenditure of International Tourist Arrivals to Thailand by Expenditure Item: 2010 – 2019, 観光庁訪日外国人消費動向調査、三菱UFJリサーチ&コンサルティングExchange Quotations - Yearly Averages より筆者作成


このグラフから見えるように、1日当たりの宿泊費は全体では日本の方が上回っている。香港とシンガポールを加え、欧米豪の国(ロシア除く)は日本で使う1日あたりの宿泊数はタイよりも大きく上回っている。一方、韓国や台湾などのアジアの国はタイでの宿泊費は日本を上回っている。


次に1日あたりの飲食費を見てみたい。

タイと日本の飲食費

データ:National Statistical Office, Average Expenditure of International Tourist Arrivals to Thailand by Expenditure Item: 2010 – 2019, 観光庁訪日外国人消費動向調査、三菱UFJリサーチ&コンサルティングExchange Quotations - Yearly Averages より筆者作成


1日あたりの飲食費は、全体的に日本で使う飲食費はタイを上回る。特に香港、シンガポール、英国は日本使う1日あたりの飲食費は他国をも大きく上回っている事が伺える。


次に1日あたりの買物代を見てみたい。

訪日客の1日あたりの買物代

データ:National Statistical Office, Average Expenditure of International Tourist Arrivals to Thailand by Expenditure Item: 2010 – 2019, 観光庁訪日外国人消費動向調査、三菱UFJリサーチ&コンサルティングExchange Quotations - Yearly Averages より筆者作成


このグラフから見てわかるように、台湾、香港、中国の3か国は日本での買物代がタイよりも大きく上回る。一方、マレーシア、インドネシア、フィリピン、ベトナム、インドはタイでの買物代が日本より大きく上回る。欧米豪は大差ない。


ここから言える事は、台湾、香港、中国からの訪日観光客は1日の旅行消費額のうち、買物代が大きく占める。つまり、この3か国が日本で買物をし続けてもらうような施策を打たなければ、訪日観光消費額は下がってしまう可能性がある。一方、欧米豪は日本でもタイでも買物代は変わらないので、これらの国に買物をしてもらうような施策を打っても効果は限定的なのではないかと考える。


最後に1日あたりの娯楽サービス費を見てみたい。

タイと日本の娯楽サービス費

データ:National Statistical Office, Average Expenditure of International Tourist Arrivals to Thailand by Expenditure Item: 2010 – 2019, 観光庁訪日外国人消費動向調査、三菱UFJリサーチ&コンサルティングExchange Quotations - Yearly Averages より筆者作成


一目瞭然で、日本はタイと比べて娯楽サービス費が圧倒的に少ない。全体でも約3倍近く開きがある。ここが訪日観光客の消費額を増やすために取り組むべきエリアだと筆者は断言できる。


では、タイと日本で何が足りなのか?それはまた次回以降にでも考察していきたい。



筆者紹介

・立命館大学卒

・SMBCフレンド証券(現SMBC日興証券)を経てかんぽ生命保険入社

・外国債券・為替ポートフォリオマネイジメント、日本株アナリスト兼株式ポートフォリオマネイジメントを担当

・米国College of William & Mary School of Business 卒(MBA)

・Japan Localized設立後、訪日観光客向けへ体験ツアーの企画運営、インバウンド市場のリサーチ業務に従事

・まいまい京都・東京事務局


会社紹介

Japan Localizedは東京、京都、大阪で訪日観光客向けのガイドツアーの運営を行っています。これまで、+50,000人以上訪日観光客へツアーを遂行しました。トリップアドバイザー社の”旅好きが選ぶ!外国人に人気の日本の体験・ツアー2020”で日本全国第3位に選出されています。現在はライブストリームで日本各地からオンラインツアーを行っております。

また、北米、欧州、豪州、南米からのインバウンドに特化したツアーの企画、リサーチ、マーケティング、英語及びスペイン語のツアーガイドの養成・研修、欧米豪南米インバウンド向けビジネスコンサルティング、メルマガ発行など幅広くインバウンドビジネスサービスを提供しております。詳しい情報やお問い合わせは弊社のホームページのお問い合わせフォームからお願い致します。



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