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年内のインバウンド復活はない|2021年8月月次インバウンドレポート

最新インバウンド情報


■8月の出来事要約


 2021年8月の訪日観光(インバウンド)のトピックとしては、東京オリンピックが閉会し、パラリンピックが開会した。コロナ変異株蔓延により、21都道府県に緊急事態宣言発令が拡大され、期間も9月12日まで延長された。

 日本政府観光局が発表した2021年7月の訪日外国人客数はオリンピック関連の入国者数増加に伴い、7月単月で51,100人となった。



■8月主なインバウンド関係ニュース

・2021年7月訪日外国人客数は51,100人となった。オリンピック関連で入国者数は大幅に増加。詳しくはこちらのレポートを参照。


・緊急事態宣言再延長の可能性。感染状況を示すステージ別指標の見直しも、専門家からの慎重論が根強い。詳細はこちら


・観光庁が令和4年度の予算概算要求を発表。前年度20%増の、177億円を要求。詳細はこちら


・加藤官房長官は、社会経済活動の回復に向けて、ワクチンパスポートの国内での活用の在り方を検討していく考えを示した。詳細はこちら


・ワクチン接種証明の利用可能範囲が拡大。現在26か国で使用可能。ただし、日本への帰国・入国後の際、ワクチン接種証明書の有無にかかわらず、水際対策に係る各種措置の対象となる。また、外国発行の接種証明は日本入国時には使用不可。詳細はこちら


・香港―シンガポール間のトラベルバブル協議が中止となった。詳細はこちら


・IATA、国際航空運送協会が欧州開発のワクチンパスポートを国際標準にするように各国に働きかけ。約60か国が導入を検討。詳細はこちら

・日本百貨店協会が発表した2021年7月免税店売上高・来店動向速報によると、免税店売上高は前年同月比+22.2%の38.7億円となった。


・観光庁が発表した2021年7月の宿泊旅行統計によると、旅館、ホテル等の宿泊数は前年同月比+29.9%の3,007万人泊。外国人は+264.9%の85万人泊となった。



■2021年7月訪日外国人客数

以下のグラフは2017年-2021年までの訪日外国人客数である。


 日本政府観光局が発表した2021年7月の訪日外国人客数は7月単月で51,100人となった。同年前月比は+449.5%。前年同月比は+1251.1%となった。

 

 国別で見ていくと、アジアでは中国3,900人、韓国1,800人と引き続き全体を牽引。次に台湾から600人、フィリピンからは500人だった。欧米豪からは、英国3、400人、フランス2、500人、ドイツ2、200人と大幅像。米国からは6,100人だった。7月から開催されたオリンピックによる選手団や報道関係者の入国が大きく寄与した。


■免税店総売上高の推移

百貨店協会が発表している免税店総売上高は以下の図の通り。

 

 2021年1月から続くビジネス・レジデンストラックの一時停止処置により訪日外国人客数は低位に水位。オリンピックで入国者数増加も、免税店の売上には大きな影響はなかった。引き続き、厳しい水際対策と緊急事態宣言下における厳しい状況が続くと言えよう。

 

 購入品の不動の1位は変わらず化粧品であり2位はハイエンドブランド。パスポート別購入者のトップは中国本土。以下台湾、韓国と続く。


以下は購買客数と購買単価の図である。


7月の購買客数は約0.9万人と先月から微減。一人あたりの購買単価は42.7万円へと低下。


■外国人延べ宿泊者数

以下の図は観光庁が発表している宿泊旅行統計調査の外国人延べ宿泊数の月次推移である。


 観光庁が発表した2021年7月の宿泊旅行統計によると、旅館、ホテル等の宿泊数は前年同月比+29.9%の3,007万人泊。外国人は+264.9%の85万人泊となった。


以下の図は2021年1月から7月までの都道府県別外国人延べ宿泊数のランキングである。


 グラフの集計を2021年7月まで集計。このランキングは在日外国人がどこの県に宿泊しているかがわかる貴重なデータだ。在日外国人の宿泊が少ない県というのは、インバウンド客にも人気がない県というのが明白なので、どのように県の観光の魅力を高めるのかを考える発射台としてほしいと思っている。何故かというと、過去のレポートでも述べたように、1日あたりの宿泊費と飲食代の相関は高いからだ。つまり、宿泊数が多く、宿泊単価が高ければその地域の飲食店への経済効果は高いと言える。なので、各都道府県はいかに外国人観光客に宿泊してもらえるような仕掛けを考える必要がある。



■今後のインバウンド市場の予想


引き続き、前回のレポートからの一般訪日観光客の受け入れのシナリオは以下の通りである(変更なし)


メインシナリオ:2022年1月以降 

楽観シナリオ:2021年10月以降 

悲観シナリオ:2022年4月以降 



【ポジティブ材料】

・日本でのワクチン接種率の加速(44.6%)

・日本政府の2030年訪日観光客数6000万人の目標



【ネガティブ材料】

・衆議院選挙の後伸ばし

・GoToトラベル事業の再開未定

・新規査証発給一時停止措置

・緊急事態宣言の延長

・変異株の蔓延


 先月から海外一般観光客の受け入れシナリオに変更はない。ただ、インバウンド復活への動きは、衆議院選挙を控えた与党が世論を気にして動きが鈍いと考える。残念ながら水際対策の緩和は10月の衆院選挙以降になると筆者は予測する。また、野村総合研究所のレポートによれば、足元の接種スピードで試算した場合、10月15日頃に接種率が7割弱となる見通しである。つまり衆院選挙後に水際対策及び、インバウンド復活に関してなんらかの動きはあると考える。 

 加藤官房長官がワクチン証明(ワクチンパスポート)の活用を年内利用開始目途に検討するという報道があったが、日本への帰国(入国)の際に、ワクチンパスポートの利用を認めるかどうかも大きなポイントである。欧州連合が導入しているワクチンパスポートの仕組みにのっかる事が考えられるが、筆者は、日本政府はアメリカの顔色を窺っているのではないかと考える。アメリカの州単位ではワクチン証明の導入が進んでいるものの、連邦政府はワクチン証明の導入には慎重だ。日本は最大の同盟国を差し置いて、国境を移動する際のワクチン証明の利用には踏み切れないのではないかと考える。国内の感染状況やワクチン接種率もあるが、日本政府は国境を開けることに関しては急ぐ必要がなく、インバウンド業者はまだしばらく厳しい事業環境に置かれるだろう。




筆者紹介

・立命館大学卒

・SMBCフレンド証券(現SMBC日興証券)を経てかんぽ生命保険入社

・外国債券・為替ポートフォリオマネイジメント、日本株アナリスト兼株式ポートフォリオマネイジメントを担当

・米国College of William & Mary School of Business卒(MBA)

・Japan Localized設立後、訪日観光客向けへ体験ツアーの企画運営、インバウンド市場のリサーチ業務に従事



会社紹介

 Japan Localizedは東京、京都、大阪で訪日観光客向けのガイドツアーの運営を行っています。これまで、+50,000人以上訪日観光客へツアーを遂行しました。トリップアドバイザー社の”旅好きが選ぶ!外国人に人気の日本の体験・ツアー2020”で日本全国第3位に選出されています。現在はライブストリームで日本各地からオンラインツアーを行っております。

 また、北米、欧州、豪州、南米からのインバウンドに特化したツアーの企画、リサーチ、マーケティング、英語及びスペイン語のツアーガイドの養成・研修、欧米豪南米インバウンド向けビジネスコンサルティング、メルマガ発行など幅広くインバウンドビジネスサービスを提供しております。詳しい情報やお問い合わせは弊社のホームページのお問い合わせフォームからお願い致します。

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