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インバウンド復活が遠のく|2021年7月月次インバウンドレポート

最新インバウンド情報

■7月の出来事要約


 2021年7月の訪日観光(インバウンド)のトピックとしては、東京オリンピックが7月23日より無観客で開催。コロナ変異株蔓延により、一都3県及び大阪府に緊急事態宣言発令。期間は延長され8月末までとなった。またワクチン証明の発行受付が開始された。

 日本政府観光局が発表した2021年6月の訪日外国人客数は6月単月で9,300人となった。



■7月主なインバウンド関係ニュース

・2021年6月訪日外国人客数は9,300人となった。新規入国の原則禁止は継続も先月から大きな変化はなし。詳しくはこちらのレポートを参照。

・日本国政府は緊急事態宣言発令解除後も、ビジネストラック・レジデンストラックを1月14日からの一時停止措置を延長。詳細は外務省の国際的な人の往来再開に向けた段階的措置について参照。


・観光庁長官が就任後初となる会見を行い、インバウンドに関して、「来たるインバウンド復活に向けての準備を推し進める」と発言。詳細はこちら


・菅首相は記者会見で8月下旬にも2回のワクチン接種を終えた割合が4割を超えるように取り組むとの姿勢を示した。詳細はこちら


・ワクチン接種証明発行開始。現在12か国で使用可能。ただし、日本への帰国・入国後の際、ワクチン接種証明書の有無にかかわらず、水際対策に係る各種措置の対象となる。また、外国発行の接種証明は日本入国時には使用不可。詳細はこちら


・香港―シンガポール間のトラベルバブルは再度延期。詳細はこちら


・JATA、日本旅行業協会は海外旅行再開に向けたロードマップを公開。国際往来の再開には国の水際対策と、外務省の感染危険度レベルが大きな壁となっているとの認識を示した。詳細はこちら

・日本百貨店協会が発表した2021年6月免税店売上高・来店動向速報によると、免税店売上高は前年同月比+68.1%の45.1億円となった。


・観光庁が発表した2021年6月の宿泊旅行統計によると、旅館、ホテル等の宿泊数は前年同月比+24.2%の1,960万人泊。外国人は+29.7%の26万人泊となった。

■2021年6月訪日外国人客数


以下のグラフは2017年-2021年までの訪日外国人客数である。


 日本政府観光局が発表した2021年6月の訪日外国人客数は6月単月で9,300人となった。同年前月比は▲7%と減少。前年同月比は+262.6%となった。

 

 国別で見ていくと、アジアでは中国2,000人、韓国800人と先月から引き続き全体を牽引。次にインドネシアから500人、フィリピンとベトナムからは400人だった。


 欧米豪からは、英国300人、フランス200人、ドイツ200人、先月からあまり大きな変化はなかった。一方米国からは1,200人と先月から増加。 



■免税店総売上高の推移 

百貨店協会が発表している免税店総売上高は以下の図の通り。


 2021年1月から続くビジネス・レジデンストラックの一時停止処置により訪日外国人客数は低位に水位。先月にあった緊急事態宣言による百貨店への休業要請が解除され、免税店売上高が45.1億円と、先月から大幅に反発した。

 

 購入品の不動の1位は変わらず化粧品であり2位はハイエンドブランド。パスポート別購入者のトップは中国本土。以下台湾、韓国と続く。


 以下は購買客数と購買単価の図である。

 6月の購買客数は約1万人と先月から倍増。一人あたりの購買単価は46.6万円へと低下も、高止まりとなっている。引き続き免税店での化粧品やハイエンドブランドの購買意欲の高さが伺える。


■外国人延べ宿泊者数

 以下の図は観光庁が発表している宿泊旅行統計調査の外国人延べ宿泊数の月次推移である。


 観光庁が発表した2021年6月の宿泊旅行統計によると、旅館、ホテル等の宿泊数は前年同月比+24.2%の1,960万人泊。外国人は+29.7%の26万人泊となった。


以下の図は2021年1月から6月までの都道府県別外国人延べ宿泊数のランキングである。

 グラフの集計を2021年6月まで集計。このランキングは在日外国人がどこの県に宿泊しているかがわかる貴重なデータだ。在日外国人の宿泊が少ない県というのは、インバウンド客にも人気がない県というのが明白なので、どのように県の観光の魅力を高めるのかを考える発射台としてほしいと思っている。何故かというと、過去のレポートでも述べたように、1日あたりの宿泊費と飲食代の相関は高いからだ。つまり、宿泊数が多く、宿泊単価が高ければその地域の飲食店への経済効果は高いと言える。なので、各都道府県はいかに外国人観光客に宿泊してもらえるような仕掛けを考える必要がある。

■今後のインバウンド市場の予想

 引き続き、前回のレポートからの一般訪日観光客の受け入れのシナリオは以下の通りである(変更なし)


メインシナリオ:2022年1月以降

楽観シナリオ:2021年10月以降

悲観シナリオ:2022年4月以降



【ポジティブ材料】

・日本でのワクチン接種率の加速

・日本政府の2030年訪日観光客数6000万人の目標



【ネガティブ材料】

・GoToトラベル事業の再開未定

・新規査証発給一時停止措置

・緊急事態宣言の延長

・変異株の蔓延


 先月から海外一般観光客の受け入れシナリオに変更はない。ただ、この1か月で状況は大きく悪化した。まずはオリンピックが無観客となり、人類がコロナに打ち勝った証明とはならなかった。むしろ、オリンピックの印象悪化を招いた。次に、ワクチン証明書(ワクチンパスポート)が相手国との相互利用ではなく、また日本へ帰国の際にも利用できず、水際対策の措置の適用となる。加えて、利用できる国も数か国と限られ、紙ベースで利用メリットが不明なままの運用開始となった。最後にワクチン供給の遅れとコロナウイルスデルタ株の蔓延に伴う緊急事態宣言の延長である。ワクチン接種率は30%を超え、8月末には50%を超えると予想されるが、デルタ変異株はワクチンで抗体を得ても、それをブレイクスルーするという事例が欧米で確認されている。筆者の意見だが、欧米のように感染症対策を取りながら、コロナとの共生にシフトしない限り、いつまでも緊急事態宣言が続くだろう。また、指定感染症法上の扱いの見直しと検討がいつ施行されるのかもポイントになろう。


 ただ、国内の宿泊統計を見ていると、国内観光はGoToトラベルが停止されているが、回復の傾向にある。まだ2019年度の水準まで及ばないが、今年の6月は昨年同月比では+24.2%となっている。つまり国内観光は回復してきており、緊急事態宣言の影響が今後あるものの、ワクチン接種による国内旅行需要の回復が続くと考えられる。


 次に、国際往来がいつ再開されるかだ。以下の図はJATA、日本旅行業協会が政府に提出した、海外旅行再開に向けてロードマップだ。

出典:JATA


 これを見る限り、9月頃からビジネストラックの再開、10月頃から帰国時の14日間隔離緩和・免除、12月頃から国際往来の再開(段階的)という見通しだ。筆者はこのロードマップには異論はない。ただ、懸念事項としては、この秋にある衆議院総選挙だ。菅総理大臣はインバウンドを主導してきた人物であり、またGoToトラベルの政策立案者でもある。その菅総理の支持率が危険水域にあり、次回の自民党総裁選で落選する可能性もある。そうなると、次期総理大臣がきちんとインバウンド政策を引き次いでくれるのかが、リスク要因だと考えている。




筆者紹介

・立命館大学卒

・SMBCフレンド証券(現SMBC日興証券)を経てかんぽ生命保険入社

・外国債券・為替ポートフォリオマネイジメント、日本株アナリスト兼株式ポートフォリオマネイジメントを担当

・米国College of William & Mary School of Business卒(MBA)

・Japan Localized設立後、訪日観光客向けへ体験ツアーの企画運営、インバウンド市場のリサーチ業務に従事



会社紹介

Japan Localizedは東京、京都、大阪で訪日観光客向けのガイドツアーの運営を行っています。これまで、+50,000人以上訪日観光客へツアーを遂行しました。トリップアドバイザー社の”旅好きが選ぶ!外国人に人気の日本の体験・ツアー2020”で日本全国第3位に選出されています。現在はライブストリームで日本各地からオンラインツアーを行っております。

 また、北米、欧州、豪州、南米からのインバウンドに特化したツアーの企画、リサーチ、マーケティング、英語及びスペイン語のツアーガイドの養成・研修、欧米豪南米インバウンド向けビジネスコンサルティング、メルマガ発行など幅広くインバウンドビジネスサービスを提供しております。詳しい情報やお問い合わせは弊社のホームページのお問い合わせフォームからお願い致します。


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