最新インバウンド情報
■11月の出来事要約
2021年11月の訪日観光(インバウンド)のトピックとしては、11月8日より、短期ビジネス目的及び留学生等の長期滞在者の入国が緩和されたものの、南アフリカでオミクロン変異株が発見され、欧米各国が渡航制限を強化に乗り出し、日本も11月30日より全世界からの新規入国を原則禁止とした。これは12月31日までの措置となる。
■11月主なインバウンド関連ニュース
・2021年10月訪日外国人客数は単月で22,100人となった。同年前月比は+24.9%、前年同月比▲19.3%となった。
・岸田総理の11月10日の記者会見で、観光目的の入国緩和については、「年内に団体観光の行動管理の実効性を行う。その実証の結果を踏まえたうえで、慎重に感染状況を見極めながら、緩和のタイミングを考えたい」と述べた。
・ベトナムは試験的に海外からの観光客の受入れを再開。詳細はこちら。
・タイは12月より入国規制を緩和。入国時の隔離を免除する「TEST&GO」プログラムを開始する。詳細はこちら。
・ニッセイ基礎研究所の調査結果の「ワクチン接種証明等の具体的な利用方法についての賛否」によれば、「海外からの入国・帰国時の隔離措置の免除」に反対が38.5%で最も多かった。詳細はこちら。
・日本百貨店協会が発表した2021年10月免税店売上高・来店動向速報によると、免税店売上高は前年同月比+49.3%の31.4億円となった。
・観光庁が発表した2021年10月の宿泊旅行統計によると、旅館、ホテル等の宿泊数は前年同月比▲34.3%の3,290万人泊。外国人は+10.7%の33万人泊となった。
■2021年10月訪日外国人客数
以下のグラフは2017年-2021年までの訪日外国人客数である。
日本政府観光局が発表した2021年10月の訪日外国人客数は10月単月で22,100人となった。同年前月比は+24.9%。前年同月比は▲19.3%となった。
国別で見ていくと、アジアでは中国4,000人先月と変わらず。韓国1,900人、インド、1,500人、ベトナムが1,000人と全体を牽引。次にフィリピンから900人と先月から約倍増。インドネシアから500人、台湾から400人だった。
欧米豪からは、英国400人と先月変わらず。フランスとドイツからは400人。米国からは2,000人だった。
■免税店総売上高の推移
百貨店協会が発表している免税店総売上高は以下の図の通り。
日本百貨店協会が発表した2021年10月免税店売上高・来店動向速報によると、免税店売上高は前年同月比+49.3%の31.4億円となった。売上上位商品群は化粧品、ハイエンドブランド、食料品、婦人服雑貨、婦人服の順番。
免税手続きカウンターの来店国別順位は中国本土、台湾、韓国、香港、シンガポール、タイ、マレーシアの順番。
以下は購買客数と購買単価の図である。
10月の購買客数は約0.6万人と過去最低水準付近になるものの、一人あたりの購買単価は50.4万円と過去最高値を記録。
■外国人延べ宿泊者数
以下の図は観光庁が発表している宿泊旅行統計調査の外国人延べ宿泊数の月次推移である。
観光庁が発表した2021年9月の宿泊旅行統計によると、旅館、ホテル等の宿泊数は前年同月比▲20.5%の2,269万人泊。外国人は+26.0%の28万人泊となった。
以下の図は2021年1月から8月までの都道府県別外国人延べ宿泊数のランキングである。
グラフの集計を2021年9月まで集計。トップは東京都、千葉県、大阪府。以下神奈川県、沖縄県、愛知県と続く。下位は高知県、奈良県、佐賀県。
■インバウンド回復の予想
前回のレポートから予想の変更がある。
メインシナリオ:2022年7月以降
【ポジティブ材料】
・特になし
【ネガティブ材料】
・ゼロコロナ思考
・日本政府の非科学的な一律的な入国制限措置
・水際対策強化に係る新たな措置(19)の特定行動ガイドライン
インバウンド(FIT)の復活は来年の7月以降と予測する。11月前半に短期ビジネス目的や長期滞在者の入国制限が緩和されたものの、水際対策強化に係る新たな措置(19)の【別添1】特定行動ガイドラインの中身を見ると、入国後14日以内(地域やワクチン接種によって場合分けあり)の行動等のガイドラインが細かく設定されている。例えば以下を読んで頂きたい。
(1)公共交通機関での移動
・できる限り自家用車・社用車又は貸切車両を利用することとし、以下の公共交通機関
については、直前の検査(有効な検査の種類と留意事項は4を参照)を実施(3日目
以降に特定行動を行うために行った検査の検体を採取してから72時間以内の場合
を除く。)し、陰性であることを確認し、移動中に感染防止対策、飲食は必要最小限と
する(水分補給を行う場合は会話をしない、移動中に食事をとる必要がある場合は、
黙食を行い、飲酒は控える)ことを徹底した上で、事前に予約して利用することができる。また、できる限り短時間で移動できる手段を選択すること。
►国内線の航空機
►鉄道(座席指定ができる新幹線・特急列車に限る。)
►バス(座席指定ができるものに限る。)
►旅客船(個室又は座席指定ができる便に限る。)
►タクシー(運転手と空間的分離ができる車両に限る。)
・利用に当たっては、受入責任者、業所管省庁又は保健所が利用したこと等を確認できるよう、車両や座席等が記載されているチケット(原本が回収される場合は写しでも可)や領収書・レシートを利用後 30 日間保存しておくこと。当該チケット等は、業所管省庁や保健所から求められた場合は、提出すること。
(3)飲食店の利用・会食
・原則として、待機施設等での飲食を基本とし、不特定多数の者が利用する飲食店を利
用する必要がある場合は、直前の検査(有効な検査の種類と留意事項は4を参照)を
実施(3日目以降に特定行動を行うために行った検査の検体を採取してから72時間
以内の場合を除く。)し、陰性であることを確認した上で、第三者認証を受けた飲食
店を利用すること。
・飲食店の利用・会食に当たって、公共交通機関を利用する場合は、(1)の基準を満た
すこと。
・飲食店の利用に当たっては、入国等の目的に照らし、必要なものに限定し、短時間(概
ね2時間以内)の利用とし、飲酒は必要最小限とすること。
・飲食店の利用に当たっては、原則として個室とし、飲食の際にマスクを外すことが多くなることから、距離を確保し、会話の際はマスク着用の上、最小限とすること。
・国内在住者との会食を実施する場合(飲食店以外での実施も含む)は、活動計画書において利用店や参加人数等を記載し、参加者全員の会食後 10 日間の健康観察(検温・症状の有無等)を行うこと。10 日間の健康観察中に新型コロナウイルスの感染が確認された場合に連絡等ができるよう参加者名簿を作成しておく等必要な連絡体制を確保しておくこと。
筆者が特定行動ガイドラインの中で最も驚いたのは、公共交通機関を利用する場合には「移動中に感染防止対策、飲食は必要最小限とする(水分補給を行う場合は会話をしない、移動中に食事をとる必要がある場合は、黙食を行い、飲酒は控える)」、飲食店を利用する場合は、「原則として個室とし、飲食の際にマスクを外すことが多くなることから、距離を確保し、会話の際はマスク着用の上、最小限とすること。」と、ガイドラインに定められており、筆者は開いた口が塞がらない。
岸田総理が記者会見で「年内に団体観光の行動管理の実効性を行う」と述べたが、海外からの一般観光客は上記のガイドライン等をベースに行動が管理されると予測される。
こんな国、誰が訪れるだろうか?日本政府未だに2030年に訪日観光客6000万人の目標を掲げている。その目標の下、日本のインバウンド業は、昭和の農協さん団体旅行モデルで再出発の準備をしている。
海外のソーシャルメディアのコメントを見ると、「日本はまるで北朝鮮のようだ」と言うコメントが印象的だった。
何より、日本国民がこのようなおかしい事に気づいていない、気づいているけど人権問題だと理解していないと言う事に筆者は驚きを隠せない。
筆者紹介
・立命館大学卒
・SMBCフレンド証券(現SMBC日興証券)を経てかんぽ生命保険入社
・外国債券・為替ポートフォリオマネイジメント、日本株アナリスト兼株式ポートフォリオマネイジメントを担当
・米国College of William & Mary School of Business卒(MBA)
・Japan Localized設立後、訪日観光客向けへ体験ツアーの企画運営、インバウンド市場のリサーチ業務に従事
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