1月第5週のインバウンド株及び国内旅行株の動きと見通し
2021年1月31日
執筆:インバウンドアナリスト
宮本 大
主要指数(週)
TOPIX(先週差)
始値1862.88 高値1863.22 安値1808.26 終値1808.78 (-47.86)
予想PER28.01 予想PRB1.19 予想EPS 64.57
※モーニングスターより
日経平均株価指数(先週差)
始値28,698.89 高値28,822.29 安値27,629.80 終値27,663.39 (-968.06) NT倍率15.29
インバウンド及び国内旅行関連銘柄の動き
インバウンド銘柄の主な材料は:
・ANAは21年度国際線事業計画を公表。ボーイング777型機の早期退役を進め大型機の保有機数を半減させ、環境負荷の少ない787型への切り替えを図る。国際線の運航規模を20年度当初計画比で半減させる。
・また、ANAは21年3月期3Qの決算を発表。売上は前年同期比▲67%の5,276億円、営業損益は▲3,624億円、純損益は▲3,095億円。旅客収入で国際線が前期比▲94%、国内線が同▲72%と落ち込んだことが響いた。通期業績予想(純損益▲5,100億円)は据え置き。公募増資や劣後ローンによる資金調達により資本と手元流動性を高めたことから、12月末の自己資本比率は31.9%、現預金残高は5,600億円を保持している。
・オリエンタルランドは21年3月期3Qの決算を発表。売上は前年同期比▲65%の1,371億円、営業損益は▲198億円、純損益は▲287億円。主力のテーマパークの臨時休園や再開後の入場制限などが響いた。一方、10-12月期でみれば、入場制限緩和による入場者数増を背景に営業利益は43億円と黒字転換した。通期業績予想(純損益▲511億円)は据え置いたが、着地として予想を上回る公算が高まっている。
国内旅行関連銘柄の主な材料は:
・JR東海は21年3月期3Qの決算を発表。売上は前年同期比▲58 %の6,030億円、営業損益は▲935億円、純損益は▲1,114億円。一方、10-12月期では、営業損益は199億円と、7-9月期(299億円)から黒字転換。Go To トラベルの効果で10-12の新幹線の利用は前年同期比55%減と、7-9月期から13ポイント改善した点が大きかった。
・通期業績予想(純損益▲1,920億円)は据え置き。1-3月期の新幹線の利用が前年同期比40%減までの回復を前提としているが、足元1月は70%減まで落ち込んでおり、業績の下振れリスクとなっている。
旅行関連株の週間パフォーマンス
1月5週目の株のまとめ
アメリカのGame Stopという会社を巡る個人投資家とヘッジファンドの争いの動向が不安材料となり、アメリカ株は大きく下落。日本株も本格化した決算発表をこなし、利益確定売りもありながらも、大きく下げる日が続き、日経平均株価は先週と比べて▲968.06円安く週の取引を終えた。
インバウンド株は日本国政政府のオリンピック中止報道否定や、正解でワクチンの普及が進んでいることを背景に、ほとんどの銘柄がTOPIXをアウトパフォーム。特に旅行代理店のHISやベルトラ、トラベルコなどを運用するオープンドア株の上昇が目立った一週間であった。
インバウンド及び国内旅行関連モニタリング銘柄の動き
以下の図はインバウンド及び国内旅行関連銘柄の昨年末からの対TOPIXでの株価動向である。
インバウンドモニタリング銘柄は木曜日に日経平均株価が大きく下落する中、インバウンド株は総じて好調であり、コロナ収束後の業績回復期待が引き続き強いと思わせる週でもあった。ANAとJALは決算発表を控えていた週だが、事前に日経新聞の観測記事もあり、業績予想と遜色ない内容を確認できたので、株価への影響は限定的であった。
以下の図は国内旅行関連銘柄の昨年末からの対TOPIXでの株価動向である。
トラベルコを運営するオープンドアが引き続き大幅上昇。HISやエアトリなども大きくTOPIXをアウトパフォーム。反対に近畿日本ツーリストのKNTCTの株価の戻りが鈍い。市場は海外旅行売上比率が高いHISの方がKNTCTより業績回復が早いと評価しているように思われる。JR東海は決算発表で通期業績予想の修正はなかったものの、続く緊急事態宣言令で4Qの見通しが厳しいとの見方が強い。
2月1週目の株の材料と動き
1日
財新製造業PMI(中)
ユーロ圏製造業PMI(欧)
ISM製造業景況指数(米)
2日
ユーロ圏GDP速報(欧)
3日
ユーロ圏非製造業PMI(欧)
ADP雇用統計(米)
ISM非製造業景況指数(米)
4日
ユーロ圏小売売上高(欧)
BOE(英)
新規失業保険申請件数(米)
耐久財受注(米)
5日
景気先行指数(日)
雇用統計(米)
日本企業の決算発表がピークを迎える。また、月初めの重要経済指標が控えている。
考察
緊急事態宣言は3月まで延長される見通しである。それによって、GoToトラベル事業に一時停止も延長になるが、旅行・インバウンド関連株価をどうなるかを考えたい。もちろん、業績にはネガティブ材料になるので、株価だけを見てみたい。
まず、2020年の緊急事態宣言下の時はどうだったのだろうか?以下の図で確認してみよう。
これを見ての通り、化粧品関連銘柄以外、緊急事態宣言中の株価リターンは全てプラスであった。中身を見ると、旅行代理店株がトップパフォーマーであった。続く、星野リゾートやワシントンホテルなどの宿泊関連銘柄も総じて強い。JALやANAなどの空運もしっかりリターンを出している。
では、今年の緊急事態宣言期間はどうなのか?まだ緊急事態宣言発令中だが、これまでのパフォーマンスを見てみたい。
2021年の緊急事態宣言は一都3県から1月8日より始まり、現在の継続中である。もちろん、前回の宣言下との違いがあるものの、総じて旅行・インバウンド関連銘柄は堅調と言える。今回も前回と同様トラベルコを運営するオープンドアが強く、HIS,ベルトラなどの旅行代理店株が上位にある。この流れが継続するのか、それとも3Q決算発表などで大きく流れが変わるか。そして、緊急事態宣言もまだ一か月続くのでしっかりとモニタリングをしていきたい。
筆者の個人的見解
米国のロビンフッダーの動向を見ながらの動きになると予想する。全体的日本株は下がったところでの押し目買い需要が強く、過度なリスクオフの警戒は不要かと思われる。また、先週までの企業決算で業績を上方修正する企業が相次ぎ、業績回復期待感からの買い需要も強い。ただ、昨年の11月から株価は大幅かつ急速に上昇したので、その分の調整があってもおかしくない。また不安定な相場の動きを懸念してのポジションの利益確定売り圧力があることも忘れてはならない。
現在、市場はコロナ収束後の金融政策正常化と財政の健全化に向けての増税などへの警戒感が出始めている。また、EV関連や新エネルギーなどの国策で買われていた銘柄や、エムスリーや東京エレクトロンなどバリュエーションの高い株価の下落が大きく、バリュエーションの修正が起こる可能性がある。逆に今まで大きく売られていた銘柄が大きく上昇してきており、循環物色が効いている相場でもある。
筆者紹介
・立命館大学卒
・SMBCフレンド証券(現SMBC日興証券)を経てかんぽ生命保険入社
・外国債券・為替ポートフォリオマネイジメント、日本株アナリスト兼株式ポートフォリオマネイジメントを担当
・米国College of William & Mary School of Business 卒(MBA)
・Japan Localized設立後、訪日観光客向けへ体験ツアーの企画運営、インバウンド市場のリサーチ業務に従事
会社紹介
Japan Localizedは現在、東京、京都、大阪で訪日観光客向けのガイドツアーの運営を行っています。これまで、+50,000人以上訪日観光客へツアーを遂行しました。トリップアドバイザー社の”旅好きが選ぶ!外国人に人気の日本の体験・ツアー2020”で日本全国第3位に選出されています。
また、北米、欧州、豪州、南米からのインバウンドに特化したツアーの企画、リサーチ、マーケティング、英語及びスペイン語のツアーガイドの養成・研修、欧米豪南米インバウンド向けビジネスコンサルティング、メルマガ発行など幅広くインバウンドビジネスサービスを提供しております。詳しい情報やお問い合わせは弊社のホームページのお問い合わせフォームからお願い致します。
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