12月第1週のインバウンド株及び国内旅行株の動きと見通し
今週のインバウンド及び国内旅行関連銘柄の情報
インバウンド銘柄の主な材料は:
・Jフロントリテイリング傘下の大丸松坂屋の11月の百貨店売上高は前年比14.9%増。前年のコロナ禍の反動などにより売上高・入店客数ともに前年実績を上回った。商品別では、ラグジュアリーブランドなどの高額品に加え衣料品や食料品も対前年2桁増となった。コロナ禍前の前々年比(試算値)では8.2%減と前月の1.8%増からマイナスに転じたものの、9月までの実績からみれば回復傾向にある。
・JALは10月の運輸実績を発表。国際線の利用率は21%、国内線は58%となった。旅客数は国際線が前年比1.7倍、国内線が同8%減。コロナ禍前の前々年比(試算)では国際線が93%減、国内線が51%減となった。国際線は大幅な減少が続いているが、国内線は緊急事態宣言の解除により前月の71%減からマイナス幅は縮小・改善している。
・また、JALは2月の国際線の運航計画を発表。成田-ホノルル線を1日1往復に増便する以外は、1月までの運航規模を継続。20年度計画に対して2月の運航率は30%。ワクチン接種証明書について、スマートフォンアプリ「VeriFLY」で確認する運用を米本土路線で開始している。
・ANAとJALは、4日午前0時から日本に帰国する邦人の国際線の予約受け付けを再開するとの報道。1日当たりの入国者上限3500人の範囲内で、外国人や日本人のキャンセルで生じた空席などで新規の予約を受け付ける。両社は新型コロナの変異株「オミクロン」の発生を受け、国土交通省からの要請に応じて1日から予約停止を実施していた。
国内旅行関連銘柄の主な材料は:
・HISの10月旅行取扱高合計は前々年同月比92%減の29億円。内訳は海外旅行が98%減の7.6億円、国内旅行が55%減の21億円、訪日旅行が97%減の0.4億円となった。国内旅行では緊急事態宣⾔の解除を受け、新規予約数が増加。需要回復の兆しがみられる。
12月1週目の株式相場のまとめ
オミクロン変異株への警戒感が消えない中、米国上院の議会証言でパウエルFRB議長がテーパリングの加速を示唆。これに加えて岸田総理の全世界からの新規入国を停止する事なども材料視され、日経平均株価は722.05円安と今週も大きく下落して取引を終えた。
旅行・インバウンド関連銘柄はオミクロン変異株の警戒感も加え、新規入国を停止する報道等で大きく売り込まれた。特にアウトバウンド専門会社のユーラシア旅行社やクルーズ旅行を扱うベストワンドットコムの株価は10%以上の下落となった。
主要指数(週)
TOPIX(先週差)
始値1954.99 高値1978.82 安値1914.93 終値1957.86 (▲27.12)
予想PER13.91 予想PRB1.09 予想EPS 140.75
※モーニングスターより
日経平均株価指数(先週差)
始値28,337.96 高値28,776.34 安値27,588.61 終値28,029.57 (▲722.05)
NT倍率14.31
インバウンド・旅行関連銘柄の株価週間パフォーマンス
以下の図はインバウンド及び国内旅行関連銘柄の昨年末からの対TOPIXでの株価動向である。
モニタリングをしているインバウンド関連銘柄は連日大幅下落。特に全世界からの新規入国停止の報道が大きく響き、空運2社やJフロントリテイリング、寿スピリッツなどの銘柄の下落が目立った。ただ、米国ファウチ氏がオミクロン変異株に関しての見解を述べたことが好感され、米国旅行関連株の上昇の流れを受けてインバウンド銘柄も大きく反発して週末の取引を終えた。
モニタリングをしている国内旅行関連銘柄で唯一プラスだったのはエアトリ。それ以外の銘柄はオミクロン変異株懸念で大きく売られたものの、全銘柄年初来パフォーマンスはプラスを維持。
12月1週目の材料
6日
7日
景気先行指数(日)
8日
9日
新規失業保険申請件数(米)
10日
消費者物価指数(米)
株式相場の見通し
足下にインフレ圧力がかかっているものの、オミクロン変異株で世界は再び行動規制を強化。それによる経済への悪影響が出ないために中央銀行はハト派姿勢継続すると予測している投資家が多かった中、パウエルFBB議長の議会証言の質疑応答でのテーパリング加速姿勢はやや予想外であった。今後もインフレとFEDの動向に神経質になる展開が続くだろう。
そのよう中、オミクロン変異株の内容が徐々に明らかになっており、世界的に警戒感がやや和らいだと考えていいだろう。売られ過ぎたアフターコロナ株に買戻しが入ると考える。また、TOPIXのPERは13倍台となり、過去の水準からしても割安と判断してもいいだろう。
インバウンド・旅行関連株は売られすぎたものの、個別企業の業績を見ていくと、まだ売られ足りないと判断できる銘柄がたくさんある。それは上記の年初来パフォーマンスのグラフを見ても明らかに判断できる。国内旅行は市場規模が縮小していき、インバウンドの回復は全く見通せない中、厳しい経営環境がまだまだ続くだろう。
筆者紹介
・立命館大学卒
・SMBCフレンド証券(現SMBC日興証券)を経てかんぽ生命保険入社
・外国債券・為替ポートフォリオマネイジメント、日本株アナリスト兼株式ポートフォリオマネイジメントを担当
・米国College of William & Mary School of Business 卒(MBA)
・Japan Localized設立後、訪日観光客向けへ体験ツアーの企画運営、インバウンド市場のリサーチ業務に従事
会社紹介
Japan Localizedは東京、京都、大阪で訪日観光客向けのガイドツアーの運営を行っています。これまで、+50,000人以上訪日観光客へツアーを遂行しました。トリップアドバイザー社の”旅好きが選ぶ!外国人に人気の日本の体験・ツアー2020”で日本全国第3位に選出されています。現在はライブストリームで日本各地からオンラインツアーを行っております。
また、北米、欧州、豪州、南米からのインバウンドに特化したツアーの企画、リサーチ、マーケティング、英語及びスペイン語のツアーガイドの養成・研修、欧米豪南米インバウンド向けビジネスコンサルティング、メルマガ発行など幅広くインバウンドビジネスサービスを提供しております。詳しい情報やお問い合わせは弊社のホームページのお問い合わせフォームからお願い致します。
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