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インバウンド復活には時間を要する|2021年10月月次インバウンドレポート

Updated: Dec 1

2021年10月月次インバウンドレポート




最新インバウンド情報


■10月の出来事要約


 2021年10月の訪日観光(インバウンド)のトピックとしては、飲食店などへの時短営業が完全に解除され、日本国内は正常化への第一歩を歩み出した。また新規コロナ感染者数の数も大幅に減少しており、あとは入国制限の解除をどう行うかに焦点が集まりつつあった1カ月であった。加えて、日本に留学を希望する学生が日本の厳しすぎる入国制限で入国できないというニュースが散見された。


 日本政府観光局が発表した2021年9月の訪日外国人客数は9月単月で17,700人となった。



■10月主なインバウンド関連ニュース


・2021年9月訪日外国人客数は17,700人となった。東京オリンピック・パラリンピックの反動より、先月より▲31.7%減となったが、前年同月比の+29.3%と、思ったより減少幅が少なかった。詳しくはこちらのレポートを参照。


・衆議院選挙期間中、日本の入国制限に関する動きはなかった。一方、ニュースなどで日本の厳しすぎる入国制限に関する記事が散見された。以下の記事を参照。

日本経済新聞:[社説]日本はいつまで「鎖国」を続けるのか

日本経済新聞:外国人、来日足止め37万人 入国制限緩和の遅れ際立つ


・アメリカ政府は11月8日より外国からの入国に関する新たなルールを適用する。航空会社に搭乗前の接種状況の確認の義務化や米国保険規制当局が認めてワクチン接種の公的証明と出発3日前までの陰性証明が必要となる。なお、18歳未満には適応外。詳細はこちら


・タイは11月1日より、低リスク国と認定した国からのワクチン接種入国者を隔離なしの入国を認める。詳細はこちら


・ニッセイ基礎研究所の第6回新型コロナによる暮らしの変化に関する調査によれば、日常生活との関わりが深いものについては肯定的な見方が強いものの、入国・帰国時の隔離措置の免除などについては否定的な見方がやや強かった言う結果となった。詳細はこちら


・日本百貨店協会が発表した2021年9月免税店売上高・来店動向速報によると、免税店売上高は前年同月比+41.0%の29.9億円となった。


・観光庁が発表した2021年9月の宿泊旅行統計によると、旅館、ホテル等の宿泊数は前年同月比▲20.5%の2,269万人泊。外国人は+26.0%の28万人泊となった。



■2021年9月訪日外国人客数

以下のグラフは2017年-2021年までの訪日外国人客数である。

2021年9月訪日外国人客数

 日本政府観光局が発表した2021年9月の訪日外国人客数は9月単月で17,700人となった。同年前月比は▲31.7%。前年同月比は+29.3%となった。


 国別で見ていくと、アジアでは中国4,000人と大幅に増加。韓国2,000人、ベトナムが1,000人と全体を牽引。次にインドとインドネシアから500人、台湾から400人、フィリピンからも400人だった。


 欧米豪からは、英国300人と先月から大幅減。フランス500人、ドイツ300人、米国からは1,700人とオリンピック・パラリンピックの反動で大幅な入国者数減だった。



■免税店総売上高の推移


百貨店協会が発表している免税店総売上高は以下の図の通り。


百貨店協会が発表している免税店総売上高

 2021年1月から続くビジネス・レジデンストラックの一時停止処置により訪日外国人客数は低位に水位。オリンピック・パラリンピックで入国者数増加も、免税店の売上には大きな影響はなかった。


 しかし、今月の発表では売上上位商品群の不動の1位であった化粧品が2位に転落し、不動の2位であったハイエンドブランドが1位となった。これは厳しい入国制限下でのとても面白い変化であると筆者は考える。これは消費性向の変化ととらえるべきなのか、一時的な要因になのかを注意深く観察していきたい。


 パスポート別購入者のトップは中国本土。以下台湾、韓国と続く。


以下は購買客数と購買単価の図である。

購買客数と購買単価

 

 9月の購買客数は約0.6万人と過去最低水準付近まで減少したものの、一人あたりの購買単価は48.4万円と過去最高値を記録。やはりハイエンドブランドの購入が大きく寄与したと考えていいだろう。



■外国人延べ宿泊者数


以下の図は観光庁が発表している宿泊旅行統計調査の外国人延べ宿泊数の月次推移である。

外国人延べ宿泊者数

 観光庁が発表した2021年9月の宿泊旅行統計によると、旅館、ホテル等の宿泊数は前年同月比▲20.5%の2,269万人泊。外国人は+26.0%の28万人泊となった。


以下の図は2021年1月から8月までの都道府県別外国人延べ宿泊数のランキングである。



 グラフの集計を2021年8月まで集計。このランキングは在日外国人がどこの県に宿泊しているかがわかる貴重なデータだ。在日外国人の宿泊が少ない県というのは、インバウンド客が地域で落とす消費額が少ないということなので、どのように県の観光の魅力を高め、たくさん宿泊してもらうように考えるべきである。何故かというと、過去のレポートでも述べたように、1日あたりの宿泊費と飲食代の相関は高いからだ。つまり、宿泊数が多く、宿泊単価が高ければその地域の飲食店への経済効果は高いと言える。なので、各都道府県はいかに外国人観光客に宿泊してもらえるような仕掛けを考える必要がある。



■今後のインバウンド市場の予想


前回のレポートからの一般訪日観光客の受け入れのシナリオを変更した。シナリオは以下の通りである。


メインシナリオ:2022年4月以降 

楽観シナリオ:2021年12月以降 

悲観シナリオ:2022年8月以降 



【ポジティブ材料】

・国内新規感染者数の減少

・ワクチンパスポートのデジタル化

・留学生の入国再開への動き



【ネガティブ材料】

・日本政府・日本国民のゼロコロナ思考とでー

・与野党政治家の慎重論

・世論



 先月からシナリオの変更はない。海外一般観光客の受け入れは来年の4月以降と予測する。ただし、足元の新規コロナ感染者数の激減により、国際社会に対して厳しい水際対策処置を課し続けることは厳しいのではないかと筆者は考える。約160年前黒船来航と違い、今はグローバリゼーションの時代である。


 先月のレポートで日本の政治家は水際対策処置の緩和に対して慎重である事を紹介した。今月は国民の意識調査からうかがえる入国制限に関しての国民の考えを紹介したい。


 まず、以下の図を見て頂きたい。これはワクチン接種証明の具体的な利用方法に対する賛否の意識調査の結果である。

出所:ニッセイ基礎研究所2020・2021年度特別調査 「第6回 新型コロナによる暮らしの変化に関する調査」 調査結果概要



レポートの中で以下のような設問があり、その解答が上記の図となっている。

“Q. ワクチン接種済み証明(ワクチンパスポート)や陰性証明を提示することで、次に挙げるような活用が考えられます。それぞれについて、あなたはどのように考えるかをお聞かせください。(1つだけ)“


 その解答の中で一番反対が多かったのは、「海外からの入国・帰国時の隔離措置の免除」(38.5%)であった。この調査結果を見ての通り、ワクチン接種証明があっても、4割近い人が入国・帰国時の隔離措置の免除には否定的であることがわかる。つまり与党の政治家が入国制限緩和に対する慎重姿勢は国民の意識と大きなずれがないという事が確認された。


 このような状況では、いつまでたってもインバウンドは復活しない。しかし、日本政府は2030年までに訪日観光客6000万人目標を堅持し、観光庁はインバウンドのための予算も潤沢に配分している。しかし、入国制限の緩和に対して、何か行動を起こしているのであろうか?日本政府には日本のインバウンド政策と未来について真剣に考え、現実的な対策やインバウンド復活のためのロードマップを考えられる人材がいないのだろう。


 また皮肉なことに、このニッセイ基礎研究所の調査では、「医療体制が脆弱な地域やひっ迫している地域への他地域からの移動」がは「海外からの入国・帰国時の隔離措置の免除」の次に反対層が多い(27.1%)。医療体制が脆弱な地域はどこなのか?それは明らかに政府がインバウンド客を呼び込みたい地方なのである。


 足元、海外留学生が日本へ入国できないというニュースや記事が散見される。日本はG7の中で唯一留学生への門を閉ざしている(MEXT留学生除く)。また、アジア各国はWithコロナへシフトしており、国を跨ぐ人の移動を徐々に再開し始めている。日本国内では大したニュースになっていないものの、国際社会の一員として、G7の一員として日本は大きくプレゼンスを落としている。11月、入国制限の緩和に関しての吉報を待ち、日本が開かれた自由な国際社会へ貢献し、また日本国内での非科学的な考えに基づく人の移動や行動の自由に制限をかけるようなマインドセットがなくなるよう、新内閣には期待をしたい。




筆者紹介

・立命館大学卒

・SMBCフレンド証券(現SMBC日興証券)を経てかんぽ生命保険入社

・外国債券・為替ポートフォリオマネイジメント、日本株アナリスト兼株式ポートフォリオマネイジメントを担当

・米国College of William & Mary School of Business卒(MBA)

・Japan Localized設立後、訪日観光客向けへ体験ツアーの企画運営、インバウンド市場のリサーチ業務に従事



会社紹介

 Japan Localizedは東京、京都、大阪で訪日観光客向けのガイドツアーの運営を行っています。これまで、+50,000人以上訪日観光客へツアーを遂行しました。トリップアドバイザー社の”旅好きが選ぶ!外国人に人気の日本の体験・ツアー2020”で日本全国第3位に選出されています。現在はライブストリームで日本各地からオンラインツアーを行っております。

 また、北米、欧州、豪州、南米からのインバウンドに特化したツアーの企画、リサーチ、マーケティング、英語及びスペイン語のツアーガイドの養成・研修、欧米豪南米インバウンド向けビジネスコンサルティング、メルマガ発行など幅広くインバウンドビジネスサービスを提供しております。詳しい情報やお問い合わせは弊社のホームページのお問い合わせフォームからお願い致します。



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